青木さやかさん 祖母の「まぜご飯」と母の「ハムエッグ」

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「ごめんなさい、わたしは、いままで、いい子じゃなくて」
「なに言ってるの、さやかは誰よりも優しいでしょう」

 著書「」の中の死を前にした母親と青木さやかさんの会話だ。国語の教師だった母に「こうあらねばならない」と固定観念を押し付けられたことへの反発、両親の離婚や売れない芸人時代のギャンブル依存、病魔と孤独……そして母親の呪縛から解き放たれ、四十数年ぶりに和解した瞬間だった。そんな青木さんが語るおふくろメシ……。

 ◇  ◇  ◇

 両親は学生結婚して2人とも教師でした。私は母が24歳の時の子供で弟が1人います。

 後に離婚することになる父は勉強のことは何も言わない人でしたが、母は世間体を気にして決して褒めない人でした。90点を取ったテストを見せるとします。褒めてもらえるのかなと思って喜んで見せると「どこを間違えたの? あと10点どうして取れなかったの?」と言う人でした。ピアノの発表会で「エリーゼのために」を弾くことになった時も、友だちが去年弾いていたとやる気をそぐようなことを言われました。

 母の影響で人を採点する癖や固定観念で物事を見る癖を私は植え付けられました。同じ事務所のビビる大木さんと友人の結婚式に出席した時のこと。みんなの祝辞を聞きながら、私が「あの祝辞どうかと思います」「よかった」と言っていたら大木さんに「なんで祝辞を評価してるんだよ」と言われました。あんなに嫌がっている母と似ているところがあるんだなと思いました。

 両親の離婚後、彼氏と住むために上京し、駆け出しの芸人時代はやることがすべてうまくいかなくて、ヤケになった時もあります。パチンコにハマって消費者金融の借金が膨らんだこともありました。でも、母親の呪縛から逃れていることが救いでした。

 その後、私も結婚、出産、離婚を経験、病気になり人知れず手術もしました。そんな時に母が病魔に侵され、ホスピスに入りました。このままではいけない……。一昨年秋に母が亡くなる前にやっと仲直りすることができました。それで「」を書こうと思いました。

 母もそうでしたが、私も食べ物には執着しない方ですね。食べ物の思い出はあまりありません。むしろ母方の祖母の作る料理を覚えています。祖母の家は私の家から歩いて15分くらいと近かった。母が学校に出掛ける前に私と弟を祖母の家に送り届け、祖父母が幼稚園の送り迎えをしてくれました。小学校の時は祖父母宅に帰って晩ご飯を食べていました。

家族で出掛けた「あさくま」が楽しみだった

 祖母がよく作ってくれたのは、うどん粉とさつまいもを混ぜてふかして作る名古屋のお菓子の鬼まんです。歯ごたえがあってずっしりしていました。一番覚えているのは、まぜご飯。ニンジン、ゴボウ、シイタケを細かく刻んで鶏肉と煮て、もち米を入れたご飯とまぜる。それからツクシがやたらと採れたので煮物をよく食べていました。野菜やカボチャの煮物、小松菜と揚げの煮物もよく出ました。今っぽかったのは鶏の唐揚げかな。祖母が作る物は茶色っぽいものが多くて、友だちが来ると当時は恥ずかしかったですね。

 母が迎えに来るのは晩ご飯を食べ終わってからです。家に帰って寝るだけなので、両親と食事をするのは朝です。母の朝食はパンとハムエッグと決まっていました。

 ハムは5枚で100円くらいの安い物。フライパンに油を引いて、熱くなる前にハムを置くからベタッとした感じ。それに卵を落とすけど、割り方が悪いのか黄身が潰れていることが多かったですね。それから皮を剥いたトマトを4等分してそれを半分に切ったのを2個と、レタスのサラダをお皿に盛り付ける。パンはマーガリンで。

 楽しみだったのは家族で出掛けた、ファミリーレストランの「あさくま」です。私と弟の誕生日とかは必ず。ここはコーンスープが有名。東京にもお店があって、コーンスープを食べた時に子供のころを思い出しました。

 もちろんステーキも食べましたが、「うちは貧乏だ」「お金がない」と言うのが母の口癖だったので心配して一番安いのを頼みました。でも、きっとそんなことはなくて、亡くなって遺産をもらった時は「あるじゃない!」と思いました。娘には「貧乏だから」とは言わないようにしようと思っています。

 受け継いだのは小松菜と納豆の信者だった祖母の料理。ベランダで万能ネギを育て、冷蔵庫には必ず小松菜を入れています。小松菜と揚げや豆腐なんかを入れたみそ汁は毎日欠かせません。

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)

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