コロナ時短命令「違法判決」の波紋「権力にクギ刺し、小池知事にお灸を据えた」と専門家
今後、都道府県知事は「命令」を出しづらくなるのではないか。
東京都から新型コロナウイルス対策特措法に基づく「時短命令」を受けた飲食チェーン「グローバルダイニング」が、「時短命令は違法」だとして、都に損害賠償請求を求めた訴訟が16日、東京地裁であった。
■都知事の過失は認められず
地裁は「命令は特に必要と認められず、違法」と指摘した一方で、「都知事に過失があるとまで言えない」として、原告側の損害賠償請求を棄却。同社は判決を不服として即日控訴した。
このコロナ特措法は、正当な理由なく時短要請に応じないことに加え、国民生活・経済の混乱を回避するため、「特に必要があると認めるとき」に命令を出せると定め、過料も設けている。
都内を中心に40店舗余りを運営するグローバルダイニングは、緊急事態宣言下にあった昨年3月18日、都内の26店舗が午後8時までの時短要請に従わなかったとして、時短命令を受けた。同時期、都内では2000店余りが協力要請に応じておらず、同社側は裁判で「原告を狙い撃ちにした、報復ないし見せしめであったから、同命令に違法な目的があったというほかない」と主張していた。
国民の“自助努力”に頼りきり
地裁は「命令を受けたのは原告だけではない」と、「見せしめ」とする店側の訴えは認めなかったものの、「『特に必要があると認めるとき』の要件に該当せず、違法である」と判断。命令の違憲性に関しては「特措法の目的に照らして不合理とは言えず、営業の自由は侵害していない」と合憲とした。
当時、感染者数が激減し、医療提供体制の逼迫も緩和されていた中、宣言を解除する3日前に命令が出されたことについては「公平性の観点からも合理的な説明はされていない」と述べた。
判決内容について同社の長谷川耕造社長(72)は、「東京都が出した命令は違法であった、ということを裁判所が認定してくれた点については、うれしく思います。本裁判で、東京都の不正やずさんさが明らかになったと思っています」とコメントした。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)は、こう言う。
「意義のある判決だと思う。たとえパンデミックが起きたとしても、権力側が自分たちの思惑や都合で命令を出すことは許されない、とクギを刺した判決です。小池知事にお灸を据えたともいえます。そもそも、政府のコロナ対策は、国民の“自助努力”に頼りきりだった。PCR検査の拡充や、病床の確保といった行政がやるべきことをやらず、国民任せだったのが日本のコロナ対策です。飲食店に時短を要請するにしても、補償とセットで行うべきなのに、チェーン店などは金額が合わなかったはずです」
今回の判決により、再び「時短要請」や「時短命令」が出たとしても従わない飲食店が続出するかもしれない。