石原結實医師「塩分は冷えを和らげ、健康長寿につながる」過剰制限の常識化にNO!

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高血圧でも長生き

 ──しかし、東北地方では高血圧の問題が指摘されています。

 ナトリウムには周りから水分を引き寄せる作用があり、血液は水分のため、血液の総量が増えます。結果、心臓は力を入れて押し出さなければならず、血圧が上がります。塩分摂取量の多い東北地方で高血圧が多いのはそのためです。

 繰り返しますが、寒い地域で塩分摂取量が多いのは、塩の体熱上昇効果を得ようとする本能の求め。もし本能にあらがい塩分を制限していたら、高血圧や脳卒中を発症するずっと前に「冷え」から起こる免疫力低下によって、肺炎、結核、がんなどで命を落としていたでしょう。

 かつ、寒い地域の人々の高血圧の原因は塩のみにあらず。冬の間の運動不足、新鮮な野菜の不足、厳しい寒さによる血管収縮などが血圧上昇に関与しているとみています。塩だけを敵視するのは間違いです。

 ──健康長寿で知られる東欧グルジア(現ジョージア)、コーカサス地方の100歳以上の長寿者も塩分摂取量が多かった。

 私は1977年からの15年間、コーカサス地方を4度訪問し、長寿食を主眼に研究を重ねました。長寿者たちと食卓を囲んだとき、度肝を抜かれたのが塩分量です。食卓に欠かせないのが岩塩が入った壺。塩味の利いたパンやチーズ、果物にまで塩を振りかけて食べる。そんな長寿者の血圧は平均180~200㎜Hgとかなり高い。

 ──世界基準の血圧の標準値は140/90㎜Hg未満。

 長寿者にとっては高血圧こそが健康長寿につながっていた。血圧とは、全身の細胞に血液で栄養や酸素を送る力です。山岳地帯で寒冷な気候、100歳になっても農作業に明け暮れる日々。老化による動脈硬化で縮んだ血管に血液を通し、60兆個の細胞へ栄養や酸素を送るには心臓がパワフルに活動しなければならず、それゆえの高血圧だったのです。

 ──脳卒中を起こさないのが不思議です。

 私もそう思い、当地の長寿研究所の教授に疑問をぶつけました。答えは、こうです。塩分は体温を上昇させ、気力・体力を充実させる作用があり、健康維持に最も重要な栄養素。しかし、体内にため込むと生活習慣病の原因となる。

 塩分の健康効果を享受するためには、労働や運動で汗を流し、不要な塩分を体にためず、速やかに排泄すること──。長寿者たちは、畑作業や家畜の世話、狩りで日々体を動かしている。結婚式や友人の家に招かれたときは歌って踊る。単に塩分を取るだけではない。筋肉運動や友人らとの交流が加わって健康長寿につながっているのです。

■実践する健康法は?

 ──経験に基づいた健康法をまとめた「石原医学大全」(青春出版社)を先月出版されました。

 私が医者になった約50年前から比べると、医者の数は13万人から34万人に増え、「医学の研究は長足の進歩をした」とされるのに、病気になる人は減るどころか増えている。2022年度には過去最高となる46兆円もの医療費を消費しているのに!

 塩分についてもそうですが、「1日3食」「動物性タンパク質の摂取を」など、世の中の常識となっている健康法は本当に正しいのか。私は著書や講演で常識を否定し続けてきて、同業者から批判を受けることも度々でしたが、クリニックやサナトリウムには、“常識”では不調が改善されなかった患者さんが引きも切らずやって来られる。

 彼らが口を揃えて言うのは、サナトリウムで「気持ちいい」「おいしい」と思うことをやっていたら「調子がよくなった」ということ。それはすなわち、体の声に従った生き方や食べ方です。常識に惑わされず、本能に従ってほしい。「石原医学大全」にはそんなメッセージを込めました。

 ──最後に、実践している健康法について教えてください。

 基本は、体を温める、そして空腹。3食満腹まで食べていると血液は胃腸に集中し、そのほかの臓器が満足に働けず、筋肉への血流も不足して体温が下がります。

 ──具体的には。

 月曜日は断食で、ニンジンリンゴジュースやショウガと黒糖入りの熱い紅茶を飲むだけ。火曜日から日曜日までは、朝はニンジンリンゴジュース2杯、昼は熱いショウガ・黒糖入り紅茶。時にポテトチップスやえびせんをつまむことも。そして夜は好きなものを好きなだけ。ビールや焼酎、ワインなどアルコールも好きなだけ飲む。空腹感もなく、むしろ仕事がはかどります。

 週4回、1回につき10キロのジョギングと、週2回、50~100キロのバーベルを使ってのウエートトレーニングもやっています。1年間365日休みなく働いていますが、ここ40年間病気ひとつしたことがなく、健康保険証は全く使っていない。血液検査の結果はオール「A」です。

(聞き手=和田真知子/日刊ゲンダイ)

▽石原結實(いしはら・ゆうみ) 1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック(東京・森下)の院長。ニンジンリンゴジュースを飲み、楽しみながら断食を行う「ヒポクラティック・サナトリウム」を伊豆高原で運営。「『体を温める』と病気は必ず治る」「生姜力」など著書350冊超。近著は集大成となる「石原医学大全」。16代前の先祖は、難破により種子島に漂着したポルトガル人から鉄砲を受け取り、日本初の国産銃を作った3人のうちの1人。

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