若い男女がひしめく新橋の「焼肉ここからデラックス」で胃袋を開放

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食えるうちに食っておかないと後悔するゾ

 次に出されたのは高級すき焼き用とでもいうべき霜降りロース。目の前で焼いてもらい卵黄をといたタレにジャブッとつけてアムッと一口。無口になる還暦男。

 ここでハイボールに切り替える。「濃いめでね」。店長にわがままを言うオッサンたち。それでも、にこやかに対応してくれるのがうれしいね。アタシら世代に、霜降りは一枚で満足。そこへ箸で千切れる軟らか赤身のヒレが登場。会話する間もなく、昔のマッチ箱のような厚切りタンがジュウジュウと騒ぎ始める。

「最近調子はどう?」

「まあまあだね」

 こんなやりとりで十分分かり合える。還暦男の会話だ。

 気が付くと広い店内は20~30代の男女で満席。彼らの食いっぷりを見ているだけで、腹が満たされる気分。しかし、まだ許してはもらえない。ここで切り札の厚切りハラミだ。玄人好みの関節技から一気にブレーンバスター、そしてバックドロップで仕留められるって筋書きだ。レアに焼いた厚切りハラミを食い千切って、野性を取り戻す還暦男。若造たちに負けるわけにはいかない。

 でも、年寄りの冷や水。無理は禁物。もう少しイケそうってところでやめておくのが大人の節度ってもんだ。それでも大満足。筋書き通りにカウントスリー。こんな至れり尽くせりなら焼き肉も悪くない。昔訪れたある国のノーハンドレストランを思い出した。たまのご褒美、医者も文句は言うまい。締めは冷麺を半分ずつにしてもらいちょうど腹八分目。渋い老舗で珍味に熱燗はこたえられないが、たまにはこんな店で胃袋を解放してやるのも悪くない。ご同輩諸氏よ、食えるうちに食っておかないと後悔するゾ。スタミナつけて夜の新橋レンガ通り。酔客の雄たけびを背に路地に潜り込む。還暦男2人でどこへ行ったのか……。それはナイショ。 (藤井優)

○焼肉ここからデラックス新橋店 港区新橋2-9-1 青葉ビル3F

【連載】今、こんな「昭和の街」が大ブーム

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