ミツカンのトップ交代と相続問題 創業家から初の女性社長
大手食品メーカーのミツカンホールディングス(愛知県半田市)は5月24日、空席となっていた社長に、中埜和英会長(70)の長女で創業家一族の裕子氏(45)が就任した。同社で女性が社長になるのは初めて。和英会長は引き続き全体の指揮を執る。
ミツカンの社長には原則、代々中埜家出身者が就いてきた。しかし、2014年に創業家以外の初の社長として長谷川研治氏が就任。16年に退任して以降、空席となっていた。なお、次女で専務であった聖子氏(42)も副社長に昇格した。
このミツカンの社長人事と並行して金融界の話題になっているのが、「ミツカンによる銀座不動産の物色」(メガバンク幹部)だ。
ミツカンは1804年に中埜又左衛門が半田市に創業した「中埜酢店」がルーツ。その後、数々の合併を経て、現在の規模に成長した。グループ全体の資金調達はミツカンアセットが担う。資産管理は「中埜酢店」が中心となって担っている。
「資産の中心である土地・建物は本人および一族グループ会社名義になっています。現在の当主である和英氏は、過去に高額納税者として度々公示されたことがあり、相当な資産を形成しています。自宅の路線価は7億1000万円となっています」(大手信用情報機関)
創業家継承のアピール
非上場企業のミツカンにとって最大の課題は会社の人的継承と資産の相続対策と言っていい。「今回の裕子氏の社長就任、聖子氏の副社長昇格は、まさに会社の創業家継承を内外にアピールするものです。同時に近い将来の資産継承に向けて不動産の購入に動いているのでしょう」とメガバンク幹部。銀座など高額不動産の購入は、「相続税を圧縮するため負債をつくる税金対策とみられます」(同)というわけだ。
また、副社長となる聖子氏を巡っては、2019年に男児が生まれた4日後に、和英夫婦がその男児を「養子」にした「父子引き離し事件」が発生している。これも中埜家の相続を念頭に置いた動きと受け止められる。ミツカンから目が離せない。