就職は知り合いのツテで、とある建設会社に内定していた。
「ところがアパートの隣人が手がける事業を手伝ううちに、そっちが面白くなってきました」
合成樹脂の化粧板で作った広告を、銭湯の洗面器に貼り付けるというアイデアだった。
内定先は断り、4月の入社初日、隣人が経営する会社に行くと、どうも様子がおかしい。
「なんと入社日が、その会社の倒産した日でした」
途方に暮れた木下氏は、長兄に相談した。兄は自身が経営する、パチンコ玉を自動供給する設備の会社に、アルバイトとして雇ってくれたのだった。 (つづく)
(ジャーナリスト・五嶋正風)