(1)消費税の実態は人件費への課税…労働者の首切りを後押しする「悪魔の税制」だ
社会保障に全額充当はまやかし
しかし、この規定は根拠にならない。なぜなら消費税は「普通税」である。普通税は使途を特定せず経費一般に充てられる税であり、特定の経費に充てる税ならば「目的税」であらねばならない。
普通税である消費税が、全額社会保障に充てられるというのはまやかしである。実際には消費税があるために、労働者は首切りされることだってある。
企業は市場競争に勝つために消費税さえをも利用する。消費税額は【(課税売り上げ-課税仕入れ)×消費税率】で求める。課税仕入れに含まれない費用の大部分を占めるのは、正規労働者に支払う賃金(給与)である。計算式の(課税売り上げ-課税仕入れ)とは(賃金+利益)に置き換えることができる。つまり、消費税の実態は人件費(賃金)への課税なのである。
企業は利益の確保を目的にするから、支払う消費税(賃金+利益)を少なくしようとする。とはいえ、利益を減らすわけにはいかない。そのため、いきおい賃金を減らす努力をするようになる。そうはいっても企業経営のためには労働力は欠かせない。だから、派遣事業・子会社・請負者など正規雇用者以外の労働力(外注費)に頼ることになる。賃金と違って外注費は「課税仕入れ」となるので、その外注費に消費税率を乗じた額だけ、負担する消費税が安くなるのである。
労働者は消費者としての税負担に加え、人員整理、合理化、労働強化、賃下げ、出向、請負化、首切りなどさまざまな消費税の悪影響を受けるのである。
総務省の2023年労働力調査によれば、全体労働者5680万人のうち正規雇用は3568万人(62.8%)、非正規雇用の割合は2112万人(37.2%)である。非正規雇用は5期連続で増加している。消費税減税に反対するなど、芳野会長の発言は労働組合の「風上にも置けない」。 (つづく)
(浦野広明/不公平な税制をただす会代表)