「勝ち筋」「ボトルネック」「ナラティブ」…賢く見える満足感も、日常会話で使わないビジネス用語にハマる魔力
書き手だけでなく、読み手も気持ちよく、伝播力が強い
なぜ、こうした言葉が流行するのか。マネー誌編集者は苦笑交じりにこう語る。
「ハッキリ言ってしまえば“賢そうに見えるから”ですよ。『問題点を分析する』より『ボトルネックを特定する』、『勝つ方法を考える』より『勝ち筋を見極める』の方が、何やら高度な分析をしているように聞こえるじゃないですか。タイトルに使えば、読者の関心を引く効果も期待できます。
便利だということもあります。例えば、最近よく目にするのが『言語化』です。本来は『説明する』『考えを整理する』『文章にする』などで良いはずなんですが、『言語化』という言葉を使うと、もっと高度な問題に取り組んでいるように見えてくるんです。
読み手側にもニーズはあります。例えば『解像度を上げる』という言葉を知り、意味も理解すれば、ちょっと賢くなったような気がしますし、“ビジネスの最先端で使われる言葉を理解できる自分は、時代の変化についていけている”という満足感も得られるじゃないですか」
もちろん、新しい言葉を知ることには意味がある。専門用語によって、それまで曖昧だった概念を整理できることもある。問題は、言葉を覚えたことと、物事を理解したことを混同してしまうことだ。「勝ち筋」という言葉を知っていても、勝つための具体策が分かるとは限らない。「センターピン」と口にしても、問題の核心を見抜けているとは限らない。言葉が難しくなるほど、内容まで高度になったような錯覚に陥りやすい。
さらに恐ろしいのは、こういった単語は伝播力が強いことだ。
「こういった言葉を批判するのは簡単ですが、意味を知った途端に自分でも使いたくなるものです。例えば最近、『ナラティブ』という単語をしばしば見かけます。これは、元々は『物語』『語り』という意味ですが、ビジネスや社会問題の文脈では、単なるストーリーではなく、当事者が物事をどう解釈し、意味づけているかというニュアンスで使われます。それなのに、何の注釈もなく使われるケースが多い。ちょっと引っかかるところではあります。
ところが、『ナラティブ』を検索して意味を理解した人が、数日後には誰かとの会話で使ってしまうんですよ。賢そうな言葉を笑っていたはずなのに、いつの間にか取り込まれて、気づけば自分もその仲間入りをしてしまうのがビジネス用語の魔力です」(前出・マネー誌編集者)
次に来るトレンドワードは何なのか。今から予測しておけば、時代の先を行けるかもしれない。そして、そんなことを考えている時点で、すでにトレンドワードに取り込まれているということなのだ。


















