【現地ルポ】クマ禍被害最多の秋田県で見た住民の悲鳴と精神的疲労

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「コロナに匹敵する状況です」

 住民らは口をそろえてこう言った。

 環境省によると、今年4~10月のクマによる全国の被害者数は計196人で、都道府県別で最も多いのは秋田の56人(死亡者3人)。10月だけで37人が襲われ、うち2人が死亡した。

 同県能代市では16日午前11時20分ごろ、「イオン能代店」に体長80センチのクマが侵入。従業員がクマを売り場に閉じ込め、2時間半後に電気ショックで駆除した。客は全員避難し、店は終日休業となった。

 同県鹿角市では16日午後3時25分ごろ、農作業中の男性が田んぼであおむけに倒れている高齢女性の遺体を発見。頭や顔にはクマに引っかかれたり噛まれた傷があった。現場は箱わなの設置にあたっている陸上自衛隊の活動拠点から、北西に1キロほどのところだった。

 人身被害に遭った状況を見ると、散歩やランニング、ゴミ出し、農作業や山菜採りのほか、電線工事の撤収作業をしていた男性2人が襲われるケースもあった。被害が出た自治体の住民らは、数カ月にわたって「外出自粛」を余儀なくされている。

「毎朝、鹿角市から出没状況や食害、人身被害の情報が緊急メールで届きます。自宅を出る時は外にクマがいないか隙間からのぞいて確かめる。コンビニやスーパーでは駐車場から足早に入り口まで行き、手動に切り替わった自動ドアを素早く開けて店内に入ります。車に戻り、匂いがしないように食料品をさっと積み込んで家に戻る。それの繰り返しです。飲みにも出歩かないので、夜になると町は静まり返る。飲食店関係者も売り上げが減り、頭を抱えています。子どもたちもクマが出没するたびに休校になり、外で遊べずストレスがたまっています。毎日車で送り迎えをする親の負担も大きい」(50代の住民)

 県内各地域とも日中に外を歩いている住民はまばらで、いつどこでクマと出くわすかわからない恐怖と緊張感が漂っている。

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