長嶋監督の「不敗神話」が崩壊した日

公開日: 更新日:

長嶋氏は「ポケットマネーから1億円プラスしても…」と

 巨人にはかつて長嶋茂雄監督の「不敗神話」があった。92年オフに誕生した第2次政権時代、狙った選手はことごとく獲得。広沢克己(95年ヤクルトからFA)、川口和久(95年広島からFA)、清原和博(97年西武からFA)といった他球団のエースや4番打者を次々に補強していった。

 長嶋監督の魅力か、それとも長嶋監督の顔に泥を塗るわけにはいかないという周囲の努力のたまものなのか、いつしか「ミスターが出馬した交渉は失敗しない」といわれるようになった。そんな長嶋監督のFA交渉が初めて不調に終わったのが97年オフの吉井理人獲得だった。現ソフトバンクコーチの本人に当時の経緯を振り返ってもらった。

「15年以上も前の話なので詳しくは覚えてませんけど、長嶋監督と会ったのは1回や2回ではありません。3、4回は会ったと思います。一流ホテルで和食をごちそうになったこともあります」

 巨人は前年、リーグ優勝。しかし、翌97年はエース斎藤雅が6勝(8敗)に終わるなどリーグ4位に低迷した。

 吉井はこの年まで、ヤクルトで3年連続2ケタ勝利をマーク。当時32歳で、選手として脂の乗った時期だった。FA宣言と同時に巨人をはじめ国内5球団からオファーがあり、中でも熱心なのが巨人だったという。

 本人は金額については口を閉ざすものの、関係者の話を総合すると巨人がこのとき提示した条件は「4年12億円」まで膨れ上がったらしい。

「長嶋監督は球団の条件に、『僕のポケットマネーから1億円をプラスしても構わない』とまで言ってくださった。『一緒に優勝して、オフに銀座をパレードしよう!』と、それはもう熱く訴えてもらいました。最後の交渉では思わずサインをしそうになったほどです。当時、最も行きたかったのはメジャーでした。ひとつでも上のステージで勝負したかったのですが、4年契約を2年に減らしてもらって、その後、メジャーに挑戦してもいいとも考えたのです」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 4

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  5. 5

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  1. 6

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  2. 7

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  3. 8

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  4. 9

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  5. 10

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    国分太一との協議内容を“週刊誌にリーク”と言及…日本テレビ社長会見の波紋と、噴出した疑問の声

  5. 5

    衆院定数削減「1割」で自維合意のデタラメ…支持率“独り負け”で焦る維新は政局ごっこに躍起

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  5. 10

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較