長嶋がすがった幻の逆転ホームラン

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 80年10月21日午前7時、長嶋監督の自宅に電話をかけた記者がいた。当時、共同通信運動部記者の菅谷斉氏(現スポーツライター)だ。

 この年、巨人は早々と優勝争いから脱落。3年連続のV逸となり、激しい3位争いのシーズン後半は長嶋監督の去就が騒がしくなった。

 菅谷氏が長嶋監督に電話した前日、巨人は広島で最終戦に勝ち、勝率5割とAクラスを確保。その夜、長嶋は帰京した。当時のことを菅谷氏はこう語る。

「NHKテレビの朝7時の時報と同時に電話をかけました。すぐに長嶋監督が出たので、あっ、一睡もしていないんだな、と思いましたね」

 その電話では次のようなやりとりがあった。

「監督、解任の情報があります。事実ですか?」

「ああ、その噂なら俺も聞いてる」

「直接言われているんですか?」

「まだ何も聞いてない」

「どういう方向で……」

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