著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

生え抜き菅野のポスティングが意味する読売巨人軍の変節

公開日: 更新日:

 日本シリーズはあっという間に終わり、博多の冬を賑わす相撲は東京で片が付き、この後の福岡国際マラソンも無観客。果たして有馬記念の怒号は聞けるのか……コロナ禍の寂しい年の暮れだ。

 そんな中、巨人菅野智之がポスティングでメジャー挑戦する可能性があるとの話題に改めて時代の動きを感じた。巨人投手のポスティング移籍は昨年の山口俊(ブルージェイズ)の例があるが、生え抜きの放出となれば菅野が初めてになる。

 日本の野球は早慶戦など学校対抗戦から裾野を広げた。プロ野球も戦前に旗揚げしたが、東京六大学リーグの陰で〈職業野球〉すなわち、カネ目当てと蔑視された。法大から近鉄―巨人と渡った関根潤三が、六大学とプロの両方のピークを味わったと話していたことがある。長嶋茂雄の登場によって職業野球は社会的地位を得たと述懐した。

■矜持の納めどころに困った

 そこからは巨人が球界の盟主だった。テレビもラジオも巨人戦の中継ばかりで、パ・リーグの試合にテレビカメラが入ったのはフジテレビのプロ野球ニュース以降のこと。巨人以外はどこも赤字経営、年俸も巨人が基準、そんな天井が抜けるのは90年代だ。結果的に日米の壁を破った野茂英雄の実績が蟻の一穴となり、松井秀喜イチロー松坂大輔ダルビッシュ有……巨人の先にメジャーというゴールがのぞいた。読売巨人軍は矜持の納めどころに困った。菅野にポスティングを認めるということは、遅まきながら自ら球界の変化を受け入れることを意味する。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    すい臓がんの治療が成功しやすい条件…2年前に公表の日テレ菅谷大介アナは箱根旅行

  3. 3

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み

  4. 4

    高市首相「午前3時出勤」は日米“大はしゃぎ”会談の自業自得…維新吉村代表「野党の質問通告遅い」はフェイク

  5. 5

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  1. 6

    「戦隊ヒロイン」ゴジュウユニコーン役の今森茉耶 不倫騒動&未成年飲酒で人気シリーズ終了にミソ

  2. 7

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  3. 8

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 9

    志茂田景樹さんは「要介護5」の車イス生活に…施設は合わず、自宅で前向きな日々

  5. 10

    NHK大河「べらぼう」に最後まで東洲斎写楽が登場しないナゼ?