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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

日本のマラソンのテーマは黙々と技術を追究する気迫と気力

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 12月4日に開かれた陸上競技の日本選手権長距離種目は好記録続出だった。女子1万メートルで新谷仁美が18年ぶりに日本記録を更新(30分20秒44)し、驚いたのは男子1万メートルだ。

 旭化成1年目の相沢晃の27分18秒75を筆頭に伊藤達彦、田村和希の3人が日本記録(27分29秒69)を上回った。従来の記録は記録会で残り1周までケニア選手が引っ張ったもの。その前の高岡寿成(2001年・27分35秒09)、14年間破られなかった中山竹通の記録(1987年・27分35秒33)は海外レースで達成された――国内レースで一気に男女計60人が自己ベストを出し、田中希実(女子5000メートル)、新谷、相沢が東京オリンピック代表に内定した。

 福岡国際マラソンも好記録が生まれ、厚底シューズ、スパイクの軽量化など長距離ギアの改良の影響は明らかだ。マラソンはケニア勢が登場した90年代から高速化が進み、実験上では既に2時間を切っている。記録は陸上競技の最重要課題だが、マラソンをお家芸として育んできた日本の事情は違う。地味な練習をコツコツ積み重ね、沿道の声援を受けながら苦闘しゴールへ向かう。寺沢徹、君原健二、円谷幸吉、宗兄弟、瀬古利彦、中山竹通、谷口浩美……記録ではなく気力こそが称えられ、マラソンはしばしば人生にも例えられてきた。

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