著者のコラム一覧
後藤逸郎ジャーナリスト

1965年生まれ。毎日新聞大阪経済部次長、東京本社特別報道グループ編集委員などを経て現職。著書に「オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側」(文春新書)。

日本メディアは中立を捨て五輪の利害関係者となった

公開日: 更新日:

 オリンピック選手は、激しい運動後に免疫反応が過剰反応することがある。基礎疾患を持つパラリンピック選手も多い。ロンドン大会陸上男子短距離銀メダリストのヨハン・ブレーク(ジャマイカ)は2月、「ワクチン接種よりも、五輪を欠場する方がいい」と表明。ワクチン接種に慎重な選手の自己決定権の尊重は自明のことだ。しかし、バッハ会長の“二枚舌”を非難する報道もまたない。オリンピックへの忖度がそこにある。

 読売、朝日、毎日、日経、産経、北海道新聞の有力紙は東京大会のオフィシャルスポンサーだ。資金提供の見返りに、五輪マーク使用などの特権を得た。6紙は中立を捨て、大会開催で利益を得る利害関係者を選んだ。自社の不利益になるからオリンピック開催に伴う感染爆発リスクを伝えないのであれば、もはや報道機関ではない。

 忖度はまだある。オリンピック憲章はIOCとNOCの国別メダル獲得ランキング作成を禁じている。オリンピズムの名誉は、国でなく個人との建前からだ。「メダル数過去最多」などオリンピックで当たり前となっている報道は、IOCから中立な報道機関の言論の自由として成り立つが、利害関係者の6紙のメダル報道は憲章に抵触する行為だ。女性蔑視発言がオリンピック憲章違反だと、森喜朗組織委前会長を辞任に追い込んだ6紙はどう整合性を取るのか。

 コロナ禍はオリンピックの本質を暴き、報道機関が無批判に相乗りできる事業ではなくなった。6紙のオリンピックのスポンサー就任は報道機関の自殺行為として、歴史に刻まれるだろう。 =おわり

【連載】本当にやるのか? 東京五輪7つの壁

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「転職者は急増」なのに「人材派遣会社は倒産」が増えているワケ

  2. 2

    俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」

  3. 3

    驚きの品揃え! ダイソーでほぼすべて揃う「防災グッズ」の実力は?

  4. 4

    優勝の祝儀で5000万円も タニマチに頼る“ごっつぁん体質”

  5. 5

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  1. 6

    長嶋一茂はこんなにも身だしなみを意識している? VIOはもちろんアンチエイジングも

  2. 7

    大関・大の里すでに「師匠超え」の鋼メンタル!スキャンダル報道もどこ吹く風で3度目賜杯

  3. 8

    大関・大の里3度目優勝で期待される「大豊」時代の幕開け…八角理事長も横綱昇進に期待隠さず

  4. 9

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 10

    国民民主党はやっぱり与党補完勢力だった! 企業・団体献金「存続」で自民党に塩を送る罪深さ