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後藤逸郎ジャーナリスト

1965年生まれ。毎日新聞大阪経済部次長、東京本社特別報道グループ編集委員などを経て現職。著書に「オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側」(文春新書)。

「中止すれば経済損失」は本当か コンコルド効果の可能性

公開日: 更新日:

 木内氏は日本銀行の審議委員を務め、黒田東彦総裁の大規模金融緩和継続に「少数派」として反対してきた。現在所属する野村総研の筆頭株主である野村ホールディングスは、東京大会の「ゴールドパートナー」を務めている。木内氏の指摘は重い。

 そもそも、感染対策で訪日外国人観光客の入国を中止した段階で、当初もくろんだ観光需要は喪失した。国立競技場など各種競技会場やインフラ整備、準備費用は大半を支出済みで、その分の経済効果は既に得ている。

 中止でこれらが無駄になるという考え方は、「コンコルド効果」と呼ばれる。<認知バイアスの一種で、投資の継続が損失の拡大につながると分かっていても、それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんで投資がやめられない心理現象>(野村証券「証券用語解説集」)だ。

 超音速旅客機コンコルドの失敗は、<開発途中で既に採算が取れないことが想定されていたにもかかわらず、開発・就航を続行>(同)したためだ。

 政府や東京都、組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)は、まさにこの認知バイアスに陥っている。武藤敏郎組織委事務総長は根拠を示さず「五輪を開催する方がはるかに経済効果がある」と言う。菅義偉首相は、かたくなに中止時の基準提示を拒んでいるが、強行開催に伴う感染爆発のツケを払うのは国民だ。 (つづく)

【連載】それでもやるのか?東京五輪最終攻防

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