小林浩美会長の肝いりネット配信は「赤字」タレ流し! 事実を伝えない執行部の隠蔽体質

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「反響はすごく大きい。毎日、女子プロゴルフを見てくださるコアなファンの方からの声が多く、ありがたい」

 今季から女子ツアーのネット中継をスタートさせた小林浩美・日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)会長が、今月14日に行われたオンライン会見で語ったそのネット配信についてのコメントだ。

 日頃から「協会にはカネがない」が口ぐせだった小林会長は、長年主催者やテレビ局にあった放映権の協会帰属を訴えて収益アップを画策してきた。その先駆けとしてスタートさせた肝いりのネット事業だけに、好調をアピールしたかったようだが、内情はちょっと違う。

 今季女子ツアーは「ダイキンオーキッドレディス」(3月3~6日)から開幕。「GOLFTV」が今季36戦をライブでネット配信するとJLPGAが発表したのは開幕戦前日の3月2日だった。

 そして大会2日目の4日になって、今度は「DAZN」でも同じ36試合でライブ配信すると発表するなど、ファンへの告知が慌ただしかった。

■「GOLFTV」「DAZN」2社体制に説明なし

 小林会長は昨年暮れに、「複数社と交渉している」と明かしていたが、その経緯については一切語っていない。

「ライブ映像をネット配信する方からすると、独占でないとうまみはありません。当然のことですがJLPGAに支払う放映権料は安くなります。JLPGAの希望額通りの契約なら1社独占も良かったのでしょうが、思惑通りに高く売れなかった。だからネット配信の窓口を2社に広げて、少しでも視聴契約数を増やしたかったのです」(ツアー関係者)

 2社合わせてもJLPGAが「当初見込んだ放映権料の10分の1ぐらい」(関係者)の収入しかないとみられ、赤字額が膨らんでいると、いわれる。

 小林会長はかつて、放映権を一括管理して(女子ツアーの映像が)20億円で売れたら、制作費を差し引いても主催者に500万円も600万円も配分できる。フィットネスカーを導入したり、ツアー会場に育児施設を造ったり、女子プロの年金システムもできると大風呂敷を広げた。

 もちろん「たられば」の話だったが、その後はカネに関する話は一切出てこない。小林会長の思惑通りに運んでいないのは確かだ。

 赤字の原因は、制作費が負担になっているからだ。

「GOLFTV」や「DAZN」は映像制作にはタッチしておらず、パッケージになった大会映像を配信するだけ。そこでJLPGAは映像制作を「ステップ・アップ・ツアー」を独占生中継するスカイAに発注している(今季2戦目の「明治安田生命レディスヨコハマタイヤ」は中継局のテレビ東京が制作)。

試合を消化するごとに膨らむ制作費

 ちなみに「GOLFTV」は昨年、「日本女子プロゴルフ選手権」「スタンレーレディス」「マスターズGCレディース」「伊藤園レディス」「大王製紙エリエールレディス」「JLPGAツアー選手権リコーカップ」の6試合を毎日ネット配信した。ところがJLPGA会員に配布した昨年の決算報告書にある「経常収益」欄には、ネット配信収入の記載がない。前年度0円の事業だけにすぐわかる。

「スカイAは試合会場に毎週100人近いスタッフを派遣、それこそ朝早くから遅くまでネット配信の映像作りに従事している。現場では制作費が安くて割に合わないという不満も聞く。少なく見積もってもJLPGAが支払う制作費は1試合3000万円はかかっている」(テレビ局関係者)

 3000万円なら年間36試合の制作費は約11億円にもなる。

「収益が少なく大会が開催されるごとに赤字が膨らんでいるのは確かです。JLPGAにはこれといった資産もなく、これから赤字に耐えられなくなる。現場に派遣するスタッフを減らしたり、中継ホールを減らすなどして制作費を抑えるしかありません。当然、映像のクオリティーも落ちて、女子プロの魅力を伝えることができなくなる。小林会長はネット配信の有料化でJLPGAの財政強化を目指したが、実際は赤字。小林会長は説明責任を果たさずに“反響はすごく大きい”と周囲をミスリードしている。多くのツアー主催者は、ネット配信の赤字を押し付けられるのではないか、と心配しています」(ツアー関係者)

 日刊ゲンダイはJLPGAにネット配信に関する質問状を送った。

 ネット配信の発表が遅れた理由は、「配信の準備に時間を要したため」。ネット配信の今期収益は、「秘密保持義務があり、回答を控える」。映像制作費用は、「企業秘密のため回答は差し控える」。決算報告書にネット配信収益が記載されていない件については、「内容については先日の総会で説明した通り」。

■JLPGAの回答は闇に包まれたまま

 JLPGAの回答は、いずれもネット配信の現状を明かしたくないのか、明かすことができないほど悪化しているのか、闇に包まれたままだ。

 昨年、「GMOインターネット・レディース」の主催者が、インターネット中継の有料しか認めないJLPGAの方針にあきれてツアー撤退を決めて騒動になった。その後、JLPGAは女子プロに「全部ウソ。主催者には説明している。報道には惑わされないように」と手紙を送って会員の動揺を抑えるのに必死だった。

 それも身内である女子プロにすら詳しい情報を開示していないからだ。健全な女子ツアーの発展には、事実を隠し続けるJLPGA執行部の体質改善が一番の急務であろう。

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