著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

森保Jの“強心臓”南野拓実の原点 セレッソ時代の恩師が明かす「高1モナコ練習参加」エピソード

公開日: 更新日:

元ドイツ代表FWに「うるさいんじゃ!ボケ!」

 ──単独でモナコの練習に参加したのは?

「2011年の1月。高1の冬休みの約2週間ですね。私も一緒に行きましたが、スタジアム内にクラブハウスと寮があって、そこに寝泊まりしながら練習する形でした。日本人の参加者は拓実1人だったのに、自ら進んで挨拶し、周りに溶け込んでいきました。現地でモナコの強化スタッフからアジアのスカウティング資料を見せてもらったんですけど、日本人でリストに入っていたのは、拓実ともうひとりだけでした」

 ──その11年後にモナコ入りとは奇遇です。

「そうですね。練習参加後も2回ほどチームでフランスには遠征しています。メキシコで開催された11年U-17W杯でフランスとは対戦しましたけど、拓実は速くて強靱な相手をこじ開けられなかった。たくさん動いてマークを剥がそうとする努力は印象的でしたが、それだけでは勝ち切れない。そうした経験を重ね、中盤で試合をつくってからゴール前に飛び出していくスタイルに変化していったと思います」

 ──高校3年間で彼はどんな変貌を遂げました?

「高1の時は2学年上の杉本健勇(磐田)と2トップを組み、彼の周りを一生懸命に動いて守備もしていました。U-15時代は『点を取りたい!』とエゴイストになっていたようですけど、徐々に人を使いながらゴールを奪うことを覚えていった。上を目指す意識の高さは飛び抜けていました。試合中は先輩のことも呼び捨て。上下関係に縛られることなく、堂々とプレーできたのも良かった。拓実は、根っからの関西人(笑)。ヤンチャなことをやっても曜一朗(柿谷=名古屋)や蛍(山口=神戸)、扇原(貴宏=神戸)にも可愛がられた。モナコの時も、言葉が分からないのに、アクションだけで盛り上げてましたからね」

 ──トップ昇格後は?

「すごく貪欲なタイプなのでトップで出番が少ない時には『ユースの試合に出してください』と言ってくることもありました。13年の夏には香川真司(シントトロイデン)がいたマンチェスター・ユナイテッドと試合をしたんですが、そこでゴールを決めたのも印象深いです。『世界のスカウトがいる中で結果を残せば何かが起きるかもしれない』と我々も考えていましたが、強引に行って本当にいいシュートを決めるのが拓実らしい。元イングランド代表のDFリオ・ファーディナンドが褒めていたという話も聞きました。14年末にザルツブルク行きの話が出た時も、クラブ的には『ぜひ出したい』という方針だったと思います」

 ──その14年にはザッケローニ監督率いる日本代表に初招集された。

「呼ばれる前に、いいパフォーマンスを見せていたので我々も期待しましたが、その年のブラジルW杯は予備登録。残念な結果でしたが、ブレずに海外に行くという目標は、持ち続けていましたね」

 ──同年11月の仙台戦では、ボールを要求してばかりの同僚の元ドイツ代表FWカカウに「うるさいんじゃ! ボケ!」と言い返す負けん気の強さも見せました。

「カカウは前線で守備をしてボールを要求していました。拓実は中盤から守備をして攻撃し、シュートをしていました。その結果、出てきた言葉だと思います。実績ある年長者にも向かっていくメンタルの強さでしょう。セレッソ側としても技術、フィジカル、メンタルが揃わないと世界では戦えないという話を常にしていましたし、本人もよく分かっていたのでしょうね」

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