著者のコラム一覧
生島淳スポーツジャーナリスト

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大卒。広告代理店勤務後、スポーツジャーナリストとして独立。高津臣吾著「一軍監督の仕事」「二軍監督の仕事」(ともに光文社)の企画・構成を担当。「エディー・ジョーンズとの対話」「箱根駅伝 ナイン・ストーリーズ」(ともに文芸春秋)など著書多数。

(1)セ連続Vのマネジメント術 高津監督は目先の結果に動じず、長い目で選手を信じた

公開日: 更新日:

「覚悟しておくように」

 この不慮の出来事が、チームの様相を変える。高津監督が不在の間は、松元ユウイチ一軍作戦コーチに指揮を託したものの、7月9日以降は連敗が続き、マジックも消滅。それでも、高津監督は泰然自若としたものだった。

「療養期間中は、割り切ってゆっくりしようかと思って(笑)。いろいろな映像を見て、“野球の勉強”をしてました」

 そして監督自身が復帰した時、ミーティングでは選手たちを前にこんな言葉を放った。

「“覚悟しておくように”と伝えました。長いシーズン、ずっとうまくいくことなんてない。選手たち自身が『このままでは終わらない』という気持ちをもって戦って欲しいことを伝えました」

 8月はかろうじて勝ち越し。しかし監督の肝は据わっていた。DeNAに追い上げられても、動じることはなかった。それは8月の月間打率、わずか.205と苦しんでいた主砲の山田の起用法からもうかがえた。

「たしかに、決して状態がいいとは言えませんでした。『あそこで凡打してるようじゃダメだ』と言われれば、その通りだったかもしれない。でも、山田は山田。それを忘れてもらっちゃ困ります」

 2位のDeNAに4ゲーム差まで詰め寄られた8月26日からの3連戦、山田は1本塁打を含む14打数6安打と、勝負どころでバットが火を噴いた。主将は監督の“信”に応えたのである。

 高津監督は投手の起用についてもこう言う。

「全部の試合は抑えられませんから。一度打たれても、次に抑えればいいわけだから」

 目先の結果に動じることなく、長い目で選手を信頼する。21世紀のリーダーの姿がここにある。

(次回は主砲・村上宗隆について)

■「一軍監督の仕事~育った彼らを勝たせたい~」(光文社新書・22年4月12日発売・968円)
 常勝チームになるための「スワローズ・ウェイ」とは何か? 「育てながら勝つ」チームマネジメント、「絶対大丈夫」に代表される言葉力──2年連続最下位からのペナント制覇と日本一達成の裏側を克明に記す(著書の帯から)

【連載】タカツの考え 恩師・野村監督以来のセ連覇

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