W杯優勝候補ドイツ撃破の大金星!大胆不敵「森保マジック」のシタタカ戦略を徹底解説

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 森保一監督(54)率いる日本代表が、W杯制覇4回の優勝候補ドイツ相手に2-1の劇的逆転勝利を飾った。

■まさかまさかの大逆転劇

 序盤から日本選手は自陣にくぎ付けとなり、33分にドイツに先制ゴールを奪われた。その後もドイツの圧倒的なペースが続き、前半のボール保持率はドイツ74%、日本26%。シュート数はドイツの14本に対して日本は1本。サンドバッグ状態で前半の45分を終えた。

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 一方的だった流れを変えたのは、森保監督の選手交代だった。後半に入ると矢継ぎ早に攻撃系選手を投入。これがモノの見事にハマった。

 1トップのFW前田大然(25)に代えてFW浅野拓磨(28)をピッチに送り出し、サイドアタッカーの左・三笘薫(25)と右・堂安律(24)を投入。攻撃系選手に厚みを持たせると後半30分にMF南野拓実(27)を交代出場させた直後だった。

 三笘のラストパスを南野がゴール左からダイレクトシュート。ドイツGKノイアーがはじいたボールを堂安が、利き足の左で同点ゴールを叩き込んだのである。

 同38分には、自陣からのFKに好反応した浅野が持ち込み、ゴール右上隅にズドン。

 途中交代選手の2発でドイツ相手にまさかの逆転大金星だ。

「日本サッカーにとって大きな歴史的勝利となった。後半に入って森保監督の采配から<アグレッシブに攻めてゴールを奪ってこい>という意図を選手全員がくみ取り、勇猛果敢に攻撃を仕掛け続け、見事な金字塔を打ち立てた」(メキシコ五輪銅メダルの釜本邦茂氏)

功を奏した試合中の大胆フォーメーションチェンジ

「ドーハの歓喜」の立役者となった森保監督は2018年7月、日本代表の指揮官に就任してから4(DF)-2(守備的MF)-3(攻撃的MF)-1(FW)を基本フォーメーションとしてきた。しかし、W杯最終予選序盤に負けが込むと4試合目に中盤3選手を「逆三角形」に配置する4-3-3に変更。この布陣に慣れている<元川崎フロンターレ組>の三笘、MF田中碧(24)、MF守田英正(27)を主軸に据えることで息を吹き返し、7大会連続7回目のW杯出場を決めた。

 ところが、9月のドイツ遠征で4-2-3-1に再チャレンジ。W杯1次リーグで対戦するドイツ、スペインの破壊的な攻撃力を封じるために「DFラインの前に守備的MF2人」を配した。

 さらにもうひとつ、指揮官には取っておきの秘策があった。J広島の監督時代に3回の優勝を果たした際の基本フォーメーションにしていた3DF(3DF-4MF-2MF-1FW)だ。

 6月に神戸で行われたガーナ戦。試合終盤に3DFを試して4-1で勝利した森保監督は「チームの立ち上げ時から3DFをオプションのひとつとして試したいと思っていました」とコメント。

 その後は、3DFを試すチャンスはなかったが、W杯直前の17日にUAE・ドバイで行われたカナダとのテストマッチの最終盤に中央・吉田麻也(34)、左・伊藤洋輝(23)、右・谷口彰悟(31)の並びで3DFをテストし、この日に備えたのである。

「森保監督はドイツ戦の後半頭からDF冨安(健洋=24)を入れ、5DFにして守備を安定させることで試合の流れを手繰り寄せ、それから攻撃的な選手を投入しながら3DFに移行。試合中のこの大胆なフォーメーションチェンジが、2-1の逆転劇を呼び込んだ。大舞台でリスクを恐れずに3DFにしてゴールを狙っていった勇気を称えたい」とは前出の釜本氏である。

 実際、森保監督の選手起用は大胆不敵だった。

 後半0分に久保を下げてDF冨安を投入。5DFにしてドイツの攻撃を封じた。同12分に左SB長友佑都(36)を下げてドリブラーの三笘を送り出すと、同時に先発FW前田に代えてフレッシュなFW浅野を入れた。 

 同26分には守備的MF田中を下げて堂安を右サイドMFに配置。同30分に右SB酒井宏樹(32)
を下げ、背番号10のMF南野を送り出した。

 守備専従者は吉田、冨安、板倉滉(25)と守備的MFの遠藤航(29)の4人だけ。攻撃系6人が束になってドイツゴールに向かって攻め入った。

「ドイツにすれば日本が攻守のバランスを犠牲にし、フレッシュな攻撃陣を次から次へと登場させたことに混乱をきたし、修正できないままに失点を重ねた印象です。前半を無失点、あるいは最少失点に抑え、後半に勝負をかける。森保監督のシタタカな戦略が、ドイツ撃破の大金星となった」(サッカーダイジェスト元編集長の六川亨氏)

ドイツのゲームプランに問題

 ドイツ1部ビーレフェルト(現2部)でヘッドコーチを務めた鈴木良平氏は「ドイツのゲームプランに問題があった」とこう言う。

「前半のドイツは前線から厳しいプレスをかけ続けて日本選手の動きを無力化し、攻めては細かいパス回しと左右への大きな展開、巧みなドリブル突破と絶妙なパスワークを絡めて素晴らしい戦いを見せた。しかし得点はPKによる1点にとどまり、ハーフタイムが終わってピッチに出てきたドイツ選手たちから、心身ともに疲弊している状況が感じ取れた。後半は案の定、攻撃陣を次々と送り出してくる日本代表の攻め手に対応できず、まさかの逆転負けとなった」

 森保監督は、かねて「W杯で初のベスト8入りのために2チームつくりたい」と話していた。

 レギュラーを固定して戦うと、決勝トーナメントに入ると疲労困憊で動けなくなる選手が出てくるため、どこかで主軸を休ませる必要がある。

 2戦目の相手コスタリカは、スペイン相手に0-7という記録的大敗。

 ドイツ戦劇的逆転勝利の日本は、コスタリカ戦で主軸を温存して戦える。

 森保監督の戦略がハマりつつある。  

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