春日良一
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春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。

ロシアとウクライナのはざまで揺れるIOCの苦悩 バッハ会長の手紙につづられていたジレンマ

公開日: 更新日:

 戦争をなくす手段としてのオリンピック休戦の思想を真摯に考えるべき時期に来ていると思った私は、昨年4月にバッハ会長に手紙を書いた。五輪憲章改正の提案である。要約すれば、「オリンピック休戦を破った国のオリンピック委員会は資格剥奪(五輪に代表を派遣できなくなる)。ただし、選手は参加資格宣言の署名によって五輪参加資格が得られる。その宣言には戦争反対が記載される」というものであった。

■プーチンとゼレンスキーのはざまで揺れる

 五輪参加意思のある国は必然的に休戦を守らなければならず、選手は自らの平和遂行意思を五輪参加によって達成できる。

 10月に入って長文のレターが届いた。

「そのとおりだが、それを規定化する中で、戦争を起こした国の選手の危険性を回避できないジレンマがある」

 ロシアでは戦争反対表明が15年の禁錮刑になるという。

 IOCの今回の声明は私の主張をくみ取ってはいる。ロシアやベラルーシの選手が参加する道は示しつつ、彼らは国旗も国歌も国を示すものが一切ない状態で、IOCの平和使命を尊重しなければならない。ロシアからは「国の代表として認めろ!」という叫びが聞こえる中、IOCとしての精いっぱいだったのだろう。すると今度はゼレンスキー大統領から「IOCの偽善を正す。激しい戦火にバッハ会長を招待する。中立というものが存在しないことを自らの目で見ることができるだろう」と強烈に非難された。

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