すっかり円くなった岡田監督の穏便采配が呼び込む18年ぶり「アレ」の予感…抗議や乱闘も今は昔

公開日: 更新日:

球場でリンチ? スクープ写真? 完全黙殺…の秘蔵ネタ

 岡田監督の抗議といえば、やはり伝説のナゴヤドーム決戦だ。

 2005年9月7日の中日戦九回裏。得点にからむ微妙な本塁判定がことごとく不利にジャッジされ、岡田監督は猛抗議。審判団から納得のいく説明がされないとして、ナインをベンチへ引き揚げさせた。このまま放棄して没収試合なら0-9の敗戦となり、マッチレースの中日に1差に詰め寄られる。

 結局、18分後に再び試合は始まったが、のちに現場にいた球団幹部からこう伝え聞いた。

「連盟への制裁金、中日からは放映権料や入場料など多額の賠償金を請求される。監督に『ざっと3億円ぐらいになります』と説明したら、えっ!?という顔をしていたよ」。試合再開は莫大なマネーも影響していたか。

 さて、もう時効だと思うので、猛虎軍団の審判団への抗議に関する秘蔵ネタをひとつ。時は昭和。どのOB政権時だったのかなど、コトがコトだけに匿名でオブラートに包ませていただきます。

 あるシーズンの夏場に本拠地・甲子園で迎えた巨人戦は、試合前から熱気に包まれていた。今後の分岐点となるかもしれない大一番。相手先発は巨人の大黒柱の一人。まずはこの投手を攻略しなければ勝算はない。

 しかし、戦況は劣勢に進む。「ボール? どこ見とんや。ストライクだろ!」と阪神投手がマウンドを降りて歩き出し、指をさしてT球審に食ってかかる。今では考えられない光景だが、当時はごく普通。時にはベンチから監督が飛び出し、「コースか、高低か」と球審にプレッシャーをかけるのも日常茶飯事だった。

 そして攻撃。チャンスをつかんだ阪神だったが、三塁線へのボテボテのゴロを相手投手にうまく処理されフイに。首脳陣は「完全にファウルだろ!」と、判定を下したT球審に猛抗議。しかし、ジャッジは覆らず不信感いっぱいの敗戦を喫した。

 試合後。ゲーム中から不穏な雰囲気が漂っていたので、速足で一塁側ベンチへ向かった。すると、人がもみ合うような不気味な音が聞こえた。

「ガタガタッ、ドッスン、ガタガタッ」

 そこは阪神ベンチの出入り口で、審判団が控室へ戻る通路と交差していた。音の正体はすぐに判明した。当時、私が所属していた組織のカメラマンが、万歳の構えで必死にシャッターを押していたからだ。

 写真を見て血の気が引いた。ベンチのドアを背に複数のタテジマに取り囲まれ、無抵抗のT球審の顔がゆがみ、左ほおには右こぶし。だれのこぶしかは不明だったが、その場でボコボコにされていたのだ。

 何十年もたってから酒席で、ベンチ内にいたはずの岡田監督にこの話を振ったことがある。

「知るか。知らんわ、そんなの」

 球界には触れてはいけない聖域があった。反社との関係、サイン盗み、薬物、そして暴力行為……。当事者のT球審ら審判団は何事もなかったかのように黙殺し、カメラマンの大スクープ写真も日の目を見ることはなかった。そんな時代だった。

(長浜喜一/スポーツライター)

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