我々長嶋世代の居場所は世の中の真ん中にはない。でも僕らは長嶋に励まされ、青春を生きてきた
“燃える男”、“ミスター”の愛称で国民的人気を誇ったプロ野球元巨人監督の長嶋茂雄さんが6月3日、都内の病院で肺炎のために亡くなった。享年89。選手、監督として数々の伝説、逸話を残した「ミスタープロ野球」は、身近に接した者すべてにそれぞれの「長嶋茂雄像」を強く印象づけてもいる。
今回は日刊ゲンダイ特別号「追悼 長嶋茂雄 50人の証言」に収録されたスポーツライターの小林信也氏による回顧録を特別公開する。
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長嶋さんを「国葬で送ろう」という声は上がらなかった。そんなものかと思う。僕は感謝を込めて「国民葬」で送りたいと願い、「6月25日夜9時10分、天覧試合で長嶋がサヨナラホームランを打った時刻にそれぞれの居場所で夜空に献杯し、〈長嶋さん、ありがとう!〉と叫びませんか」と呼びかけている。
長嶋とは何者だったのか? その核心を知らない世代がすでに日本の大勢を占めている。なぜあれほど愛されたのか? 追悼報道ではほとんど語られなかった。チャンスに強い男、底抜けの明るさ、天衣無縫。長嶋は〈民主主義〉を実感できなかった日本人に「自由奔放」とか「型にはまらない発想」を体で教えてくれた。