ソフトバンク小久保監督 常勝ホークスを知る新指揮官が明かす「指導哲学」と「チーム再構築」

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納得せずともまず、やってみる

 ──令和の現代、若い選手の気質などはどう見ていますか?

「腹落ち、納得しないと動かないでしょうね。僕らの時代は『なんでこんな練習するんだよ』とか『なんでこんなこと言われなきゃならないんだ』なんてことは普通にあった。今の選手たちはそれでは動きません。ただ、『納得できないかもしれないが、まずはやってみなさい。腹落ちしている時間なんてないよ』と伝えています。これも古き良きもの、ですね」

 ──やってみなければわからないこともある。

「やってみた後に、誰かからフィードバックがあることが<経験>なんです。練習でも新しいことをやった後、コーチなどから『じゃあ、次はこうしてみようか』と言われてさらに取り組むのが成長です。知識だけ、とりあえずやった、というのは<体験>止まりなんです」

 ──最初から「納得できないからやらない」という選手にはどうするのですか?

「無理やりはやらせませんよ。ただ、『もったいないなあ。成長スピード遅くなるだろうなあ』という目では見ます。逆にまず行動に移せる選手は成長が速い。ハッキリ言うと、振り分け、淘汰ですよ。もちろん、こうした話は常日頃から選手にしているし、経験と体験の違いも説明しています。ただ、今の選手はまた別の困った面もあるんです」

■情報過多の弊害

 ──と言いますと。

「最初から拒絶反応を示すのではなく、とりあえずはやります。そのままずっとやっていたら良くなるのに、今は情報量が多いからなんでしょうね。すぐに、別のことをやり始めてしまうんです」

 ──結果が出ないと、すぐに別のアプローチを探す?

「そうです。これは2年間の二軍監督で痛感しました。だからこのオフも何人もの選手に、『今の形を軸にして固めていきなさい。フォームをごっそり変えたらダメだよ』と伝えました。好奇心やチャレンジ精神が旺盛なのは良いことだけど、そればかりでは『型』がつくれません」

 ──型、ですか。

「自分が困った時、追い詰められた時に原点に返って勝負できるものです。型は同じ練習を延々と繰り返さないとつくることはできません。その発想が若い選手にはあまり見受けられない。僕はバッティングの型は2つ持っていますが、小学校1年から野球を始めて、プロでも19年もプレーして、見つかった型はたったの2つだけです。この2つはどっちでも実戦で勝負できる。そこに至るまでは何十万回じゃ利かないくらいの反復練習をしました。武道で言うところの『守破離』ですね。まず教わった型を守り、それを破って発展させ、最終的にそこから離れて独自の型をつくる。こうした話を若手にしても、なかなか理解してもらえない(笑)。これなんかまさに昭和的ですね(笑)。でも、それでいいんです。僕も王さんが全体ミーティングの中で話されていた、いくつかの言葉が人生の指針になっています。満遍なく話す僕の経験談が選手のアンテナにひっかかれば、と思っています」=2024年1月4日発売号につづく

(聞き手=阿川大/日刊ゲンダイ

小久保裕紀(こくぼ・ひろき) 1971年、和歌山県和歌山市出身。青学大から逆指名し、93年ドラフトでダイエー(現ソフトバンク)に2位指名され入団。主砲として活躍し、2003年オフに無償トレードで巨人に移籍。07年に古巣に復帰し、2000安打を達成した12年に引退した。13年に侍ジャパンの代表監督に就任し、17年WBCでベスト4入り。21年にヘッドコーチとしてホークスに復帰すると、22年の二軍監督を経て今オフ、一軍監督に就任した。現役通算2057試合、2041安打、413本塁打、1304打点、打率.273。

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