長嶋茂雄さんは「オチャメなおじさん」でもあった。クビにした僕に興奮混じりで放った仰天発言
突然、長嶋監督から自宅に電話がかかってきたのだ。
その数日前、ある民放局でボクのドキュメント番組が放送された。巨人をクビになり、ダイエーの入団テストに合格するまでを密着した内容だ。自宅の中にテレビカメラが入り、ヨメさんと2人の子供も出演した。周囲から「私生活を切り売りしてまで恥をさらす必要はない」と取材協力に反対する声もあったが、ボクはその時の心境を包み隠さずカメラの前で話した。番組の最後にはテストの合格を告げるダイエーからの電話を受け、泣きじゃくるヨメさんの姿も映し出された。自分のすべてをさらけ出すことによって、巨人をクビになって瀬戸際に立たされた自分にプレッシャーをかける意味もあっての出演だった。
長嶋監督がたまたまその番組を見ていた。
「よかったなあ。いい番組だったよ。感動した。オレ、泣いちゃったよ」
長嶋監督は興奮した口調で電話をかけてきた。
「ハシ、おまえはまだまだできる。まだ、若いんだから。大丈夫、大丈夫。できる。まだ、大丈夫」