長嶋茂雄さんは「オチャメなおじさん」でもあった。クビにした僕に興奮混じりで放った仰天発言
あの長嶋茂雄が直々に電話をくれて、ボクを励ましている。正直、感激した。でも、同時に変な違和感を覚えた。
あれ、何か、おかしくないか?
ボクが巨人をクビになったのは、長嶋監督が「橋本は戦力外」と判断したからだ。自分がクビにした選手に電話をかけてきて、「おまえはまだできるぞ」なんて普通は言わないよなあ? そう思ってくれるのなら、巨人に戻してくださいよ。頭の中でそんなことを考え、思わず苦笑いが浮かんだ。でも、これが長嶋監督。悪気などないのだ。
「納会には必ず顔を出せよ。じゃあ」
どこまでも明るい声で長嶋監督は電話を切った。
普段の長嶋監督もこのままの人だ。スーパースター監督だから近寄りがたくもあったが、ボクにとっては、大変失礼ではあるが、「オチャメなおじさん」でもあった。
試合前の練習中、音もなく背後に忍び寄られて、背中を「バッシ——ン」とどつかれる。ムッとして振り向くと、「えっへへへ」とあの独特の笑い声を発しながら、ボクを指さす長嶋監督が立っている。