(5)藤川長期政権で描く阪神「V10構想」の野望…監督から将来は編成トップに
黄金時代構築に向けた組織づくり
「いずれ佐藤輝、才木がメジャー挑戦するにせよ、阪神がV2、V3を達成するだけのチカラは十分にある」とは、他球団の編成担当だ。
「ライバル5球団の戦力と比較しても、少なくともむこう3年間は優勝を狙える。このオフ、巨人は岡本和真、ヤクルトは村上宗隆がポスティングによるメジャー挑戦が決定的。セ界屈指の強打者が揃って渡米するうえ、巨人、DeNA、広島、中日、ヤクルトはよほどのFA選手、外国人選手が加入しない限り、阪神を上回るのは難しいとみています」
3年契約の藤川監督の任期は27年まで。勝ち続ければ長期政権も視野に入る。指導者経験ゼロからの戴冠で親会社、球団内の評価もうなぎ上りだという。
しかし、コーチ経験がある球団OBは「監督を3年務めた後は、フロント入りに関心を持っているようです」と、こう続ける。
「現役引退直後の21年に球団本部付SA(スペシャルアシスタント)に就任。嶌村球団本部長の下で編成業務に携わり、外国人選手の獲得もサポートした。メジャー時代には米球団のスカウト、育成、編成、健康管理、データ分析などの『オペレーション』業務を肌で体感。監督としてデータを重視してチーム力を底上げし、選手のコンディショニングに細心の注意を払って主力に故障者を出さなかったのも、メジャー経験が生きている。藤川監督は嶌村球団本部長の強力バックアップのもと、編成面に対しても発言力を持っている。新人発掘、チーム強化において結果を残しているスカウト、スコアラー体制の持続はもちろんのこと、助っ人獲得に関わる国際部門については改革が急務だとみているともっぱらです」
今季の外国人選手は育成含めて11人の大所帯。しかし、一軍戦力として機能しているのは、デュプランティエ、ネルソン、ドリスと、いずれも投手だ。
「今季の外国人選手の本塁打は、12球団で唯一ゼロ。そもそも支配下の助っ人野手が、二軍暮らしが続くヘルナンデス一人だけしかいないにせよ、阪神は助っ人野手の失敗が多すぎる。それなりに活躍したケースは、19~22年に在籍したマルテ(通算39本塁打)くらいです。セ・リーグは27年から指名打者(DH)制が導入され、長打を打てる野手の獲得は不可欠になる。監督在任中に国際部門のテコ入れに着手しつつ、監督退任後はGMであったり、日本ハムの栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)のようなチーム編成、運営部門の最高責任者に転身。黄金時代構築に向けた組織づくりを目指す可能性は十分にありますよ」(同)
監督として、編成トップとして……。藤川球児の「V10構想」は歩みを止めない。 (おわり)