期待の新人・落合博満が突然「大学を辞めたい」…兄と姉を呼び、3人がかりの説得は深夜に及んだ(下)
元東洋大監督の故・高橋昭雄氏による「見て聞いて育てて42年」(第2回=2013年)を再公開
日刊ゲンダイではこれまで、多くの球界OB、関係者による回顧録や交遊録を連載してきた。
当事者として直接接してきたからこそ語れる、あの大物選手、有名選手の知られざる素顔や人となり。当時の空気感や人間関係が、ありありと浮かび上がる。
今回は前回に引き続き落合博満氏について綴られた、元東洋大監督の故・高橋昭雄氏による「見て聞いて育てて42年」(第2回=2013年)を再公開。年齢、肩書などは当時のまま。
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「いやー……迷惑はかけられないし……」
落合博満は、かたくなだった。
オイルショックで実家が煎餅工場を閉鎖。野球なんかやってる場合じゃないと言う落合を、わたしは何とか説得しようと試みた。
合宿所の私の部屋に本人と落合の兄姉を入れた4人で3~4時間は話し込んだ。話し合いは深夜に及んだ。
落合の兄姉は、せめて大学は卒業して欲しいと懇願。わたしも協力できることはするつもりだった。