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菅谷齊東京プロ野球記者OBクラブ会長

1943年、東京都生まれ。共同通信社でV9時代の巨人をはじめ、阪神などを担当。1970年代からメジャーリーグも取材した。野球殿堂選考代表幹事を務めたほか、三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。現在は東京プロ野球記者OBクラブ会長。

“球界の天皇”のメンツを丸潰れにした入団拒否事件…「契約金1.5億円」「生涯身分保障」まで蹴った

公開日: 更新日:

「車のトランクに入って岐阜まで行ったけど、アカンかった」

 小池側は事前に、希望球団(巨人ヤクルト西武)を明示し、同時に「行きたくない球団」として6球団を挙げ、その中にロッテも含まれていた。よりによって、そのチームに……。会見場を後にした小池は、そのまま雲隠れ状態になった。

 ロッテはこの年、金田を再度監督に招いたが5位に沈んだ。その上、エースの村田兆治が現役を引退。小池指名で投手陣強化を図ったのだが、ロッテ本社は「会社のイメージ低下」を恐れ、冒頭の2大条件を明らかにする慌てようだった。

 指名は金田の独断。その責任を痛感したのだろう、信じられない行動に出た。いつ小池側に会えるか、とマークするメディアの裏をかいた。その模様を後年、金田に尋ねると……。

「ワシな、車のトランクに入って(小池の実家がある)岐阜まで行った。マスコミから隠れるようにしてな。実家に行って話をしたけど、アカンかった。ワシと同じ左投げや。一流ピッチャーにしてやる、と言ってもダメやった」

 そして、「縁がなかった、と諦めた」。

 天下の長嶋茂雄王貞治を呼び捨てに出来る金田にはメンツがあった。学生ごときに……と。若き日、国鉄の、プロ野球のエースとして、学校を卒業したての新人のONをともに初打席で三振に切って取った。その“球界の天皇”が面目丸つぶれだった。

 小池は松下電器に入社し、92年にドラフト1位で近鉄入り。97年に15勝で最多勝のタイトルを取ったが、一瞬の輝きだった。通算51勝47敗。期待の半分にも満たない成績に終わった。

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