書き下ろしミステリー編

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「彼女の遺言」新津きよみ著

 主婦の宏美は、早世した親友の啓子の遺品を受け取る。箱から出てきたのは実験ノートと彼女の祖母の手製の梅酢が入った瓶だった。同封の手紙を読むと、小学生時代の2人が共同研究したように梅酢に10円玉を浸すと、硬貨に刻まれた製造年にタイムスリップできるという。ノートには研究職だった啓子がタイムスリップの最適の方法を得るために試行錯誤した跡が記されていた。

 戻ってみたい過去などない宏美だが、後悔していることがひとつだけあった。1年前に長男の清志の結婚を許してしまったことだ。嫁の早苗が、優しい清志につけ込み、暴力をふるっていることを確信した宏美は、1年前に戻ってある計画を実行する。

 切なくも余韻が残る長編サスペンス。(角川春樹事務所 640円+税)



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