「たとえ、世界に背いても」神谷一心著

公開日: 更新日:

 物語は、ある奇病の治療法を発見した論文でノーベル医学・生理学賞を授与された浅井由希子博士による晩餐会のスピーチから始まる。

 最初、病気の息子のためワクチン開発に全力で取り組んだことが語られ観衆から万雷の拍手を受けたが、息子がいじめを苦に自殺したことも告白。復讐のため、研究過程で見つけた強毒性の病原体を世界中に拡散したと宣言する。治療用ワクチンの生成方法を知りたければ、クラスメートを捕らえて真実を明らかにしてから、全員を殺せと脅迫したのだ。

 罹患者が爆発的に増えるにつれ、前代未聞の無差別テロの被害を恐れた世界中の人々から、元同級生の23人の高校生が狙われるようになる。果たして彼らの運命は……。

 本書は、第7回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。息子を失った母親の壮大な復讐劇をベースに、追われる女子生徒を助けようとする少年を登場させることで、迫害を受けても多数派に異議を唱え抵抗を続ける者への希望も描いている。(講談社 1700円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性