「にっぽんフクシマ原発劇場」八木澤高明著

公開日: 更新日:

 児童労働、内戦、売春、エイズ、貧困などをテーマに、アジア諸国や国内を回ってきた著者が、前代未聞の原発事故現場となった福島に飛び込んで生々しい現実を写真と文章で切り取った衝撃のルポ。

 帰還困難地域となった浪江町で酪農を営んでいた夫婦との出会いをきっかけに、住人たちの自殺や事故死や病死、ペットや家畜動物の野生化、作業員で賑わう歓楽街、故郷の喪失を再確認する一時帰宅、元原発作業員の告白など、福島で今起きている修羅場の扉をためらうことなく次々と開けていく。

 社会のためではなく自身の「自分の目で見たい」という衝動に突き動かされて飛び込んだ福島には、何代にもわたって山野を切り開き、土地を耕し、人々が少しずつ積み重ねてきた歴史と生活を一瞬にして葬ってしまった原発事故の暴力性があった。事故から4年が過ぎ、すでに「記憶の半減期」ともいわれる昨今、本書の生々しい証言とモノクロの写真が伝えてくれるものは大きい。

(現代書館 2400円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  2. 2

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  3. 3

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  4. 4

    広陵辞退騒動だけじゃない!「監督が子供を血だらけに」…熱戦の裏で飛び交った“怪文書”

  5. 5

    ドジャース大谷が佐々木朗希への「痛烈な皮肉」を体現…耳の痛い“フォア・ザ・チーム”の発言も

  1. 6

    今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに

  2. 7

    高市早苗氏は大焦り? コバホークこと小林鷹之氏が総裁選出馬に出馬意向で自民保守陣営は“分裂”不可避

  3. 8

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった

  4. 9

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い

  5. 10

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督