「復刻アサヒグラフ 昭和二十年 日本の一番長い年」朝日新聞出版編

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 3月初旬号の表紙は「基地に待機、作戦を練る特攻隊員」の写真が飾るが、よく見ると戦闘機や隊員の影がばらばらで、さも人員も兵器も十分あるように合成しているのがよくわかる。「現金で持ってゐては この決戦に間に合はぬ!」と定額貯金を呼びかける郵便局など、記事の合間に掲載された広告も戦時色一色だ。

 やがて戦況が悪化するとともに誌面にも特攻色が強くなり、「神酒を受け、沖縄の決戦場へ出撃する特攻隊員」(4月25日号)など、死地に赴く若き兵士たちの勇ましい姿の写真が多くなる。そうしたなかに一枚、恐怖と絶望で表情なく操縦席に座る少年兵の写真が印象的だ。検閲をすりぬけた編集者たちのせめてもの抵抗かと思える。

 以後、東京大空襲、沖縄戦、原爆投下、玉音放送、マッカーサー進駐、そして占領下で復興に動きだした人々の姿まで、日本と日本人が決して忘れてはならない一年の記録である。検閲下の誌面に並べられた美辞麗句が、皮肉にも戦争の愚かさを際立たせている。(朝日新聞出版 1800円+税)

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