「ウンコな議論」ハリー・G・フランクファート著、山形浩生訳
意表を突く書名だが、その内容はいたって真面目で、高名な道徳哲学の重鎮が「真実を一顧だにせぬ、その場しのぎの戯言でしかない」議論=ウンコな議論や屁理屈について分析した小論文。
誤解を招くような歪曲表現だが嘘には至らない「おためごかし」などを例に、ウンコ議論の本質的な特徴を考察。それを発する人間の心の状態にまで踏み込みながら、ある場合にはウンコ議論は嘘よりもはるかに悪いと説く。ではなぜ人はウンコ議論や屁理屈を口にするのか。意見を求められた際「知らない」「意見はない」と言うことが恥ずべきこととされるような風潮が広がっているため、人々はやむを得ず大量のウンコ議論や屁理屈をばらまくようになったと説く。
(筑摩書房 900円+税)