「少数株主」牛島信著
ある日、永田町に事務所を構える弁護士・大木忠のもとに、高校時代の友人・高野敬夫が相談があるといってやってきた。
高野は、ゴルフ場やビルなど多くの不動産を持ち、その上がりで暮らしているのだが、そんな彼の資金力を見込んで、同族会社の非上場株を買ってくれという話があるのだという。非上場株をうっかり相続したことから予想外の多額の相続税が発生した案件を知っていた大木は、高野にその危険性を忠告し、その売買自体が成立しない可能性も説明した。しかし高野は、母親が困っていたときに助けてくれたその依頼者を見捨てることができず、あるアイデアを実行するのだが……。
著者は、多くのM&Aやコーポレートガバナンスを手がけて「M&Aの守護神」とも呼ばれている弁護士。同族会社の少数株主が、裁判を通じて何十億円という金をつかみ取る現場にいた経験から、非上場の同族会社のコーポレートガバナンス問題に光を当てた本書を描いたという。現場の体験がベースになっているだけあって、特に親族から相続した非上場株所持者には、リスク面の説明も含めて必見の内容となっている。
(幻冬舎 1600円+税)