「義足でダンス」エイミー・パーディ、ミシェル・バーフォード著 藤井留美訳

公開日: 更新日:

 エイミー・パーディは、ラスベガスで青春を謳歌していた。ハンサムで優しい父、美しい母と1つ年上の姉。仲のいい家族はスキーや釣りやキャンプを楽しんだ。エイミーは15歳のときスノーボードに出合い、夢中になる。夢いっぱいのエイミーの未来は輝いていた。しかし人生、何が起こるかわからない。

 マッサージセラピストとして働いていた19歳のとき、エイミーは細菌性髄膜炎に侵されて生死の境をさまよい、九死に一生を得た。紫色に腫れ上がった両足は、膝下から切断するしかなかった。その後も腎機能が回復せず、足を失った2年後に父の腎臓を1つもらって移植手術を受けた。

 わずかな間に人生が別のものになってしまった。夢に向かって前進する足がない。だが、「もう一度、スノボがしたい」という強い思いと、自分のために心を痛める家族の姿が、エイミーを奮い立たせた。歩けるかどうかではなく、スノボをやれるかどうかが問題。目標は最初から高かった。エイミーは多くの人に支えられ、慣れない義足と格闘しながら、目標に少しずつ近づいていく。おぼつかない足取りで父と踊り、姉の結婚式に参列し、仕事に復帰した。

 カーボンファイバー製の義足は、クールでカッコいい。新しい足を肯定的に受け入れたエイミーの前に、人生が開けていく。スノボの再開、身障者のスポーツ活動を支援するNPO活動の立ち上げ、映画出演、パートナーとの出会い、ダンスコンテストへの挑戦。そして、2度のパラリンピックに出場し、ソチで銅、平昌で銀メダルを獲得した。

「もし、人生が1冊の本だとしたら、どんなストーリーにしたい?」。エイミーは自分にそう問いかけながら生きてきた。不運や逆境を嘆いたりはしない。自分のストーリーを書くのは自分自身。そんな力強いメッセージが伝わってくる。(辰巳出版 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝