赤い鳥とオフコースが新宿厚生年金会館で優勝争い

公開日: 更新日:

「フォークソングの東京聖地巡礼 1968―1985」金澤信幸著/講談社 1500円+税

 1971年7月28日、日比谷野外音楽堂は異様な空気に包まれていた。

“フォークの神様”こと岡林信康が「自作自演コンサート 狂い咲き」と称し、デビュー以来4年間に作った全32曲を歌うという特異なコンサートだった。まずはギターの弾き語りで「友よ」「山谷ブルース」「チューリップのアップリケ」などを披露。途中からバックバンドとして柳田ヒロ・バンド(ピアノ=柳田ヒロ、ベース=高中正義、ドラム=戸叶京助)が参加。しかし、多くの人はそこに「はっぴいえんど」の姿を見ていた――。本書を読みながらそんな昔の光景を思い出した。

 本書は1960年代後半から80年代半ばに東京で行われた歴史に残るコンサートや演奏が行われた23の“聖地”の跡をたどったもの。赤い鳥とオフコースが優勝を競ったヤマハ・ライトミュージック・コンテストが開催された新宿厚生年金会館、忌野清志郎、泉谷しげる、古井戸らが出演していた渋谷の「青い森」、ユーミンの「雨のステイション」の舞台の西立川駅、RCサクセションの復活を決定づけた久保講堂……。

 さまざまなシンガーやバンドが登場するが、くり返し名前が挙がるのがはっぴいえんどと、岡林に取って代わって“フォークの旗手”となった吉田拓郎だ。はっぴいえんどは一時期、岡林のバックを務めていたことがあり、先の「狂い咲き」コンサートでは既にたもとを分かっていたが、フォークの岡林とロックのはっぴいえんどの組み合わせは強い印象を残していたのだ。

 ともあれあの時代に青春を送った人たちには懐かしいシンガーやライブハウスの名前が満載。昔を思い出し、老いた頭を刺激するのもよし、若い人には日本音楽史の地層を掘る楽しみも。 <狸>


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択