「果糖中毒」ロバート・H・ラスティグ著 中里京子訳

公開日: 更新日:

 WHOの統計によると、世界の約19億人が太り過ぎの状態であるという。原因は、意志の弱さからあらゆるものを食べ過ぎているからだと思うだろう。しかし、その考え方は大間違いであると指摘するのが、ロバート・H・ラスティグ著「果糖中毒」(中里京子訳 ダイヤモンド社 2400円+税)だ。最新の229の医学論文から、肥満大流行の原因を明らかにしている。

 現代人は、“あらゆるもの”を食べ過ぎているわけではない。アメリカでは30年ほど前から低脂肪が推奨され、総摂取カロリーに脂質が占める割合は40%から30%に減少。タンパク質も15%を推移している。ところが、炭水化物(糖質)は40%から55%に増加。中でも果糖の摂取量は過去30年で2倍に増加していることが分かったのだという。

 果糖の取り過ぎは自己管理の甘さだけで起こるものではない。果糖はほぼすべてが肝臓で代謝されるが、その処理能力を超えると膵臓(すいぞう)から大量のインスリンが分泌される。すると、食欲をコントロールするレプチンというホルモンの働きを邪魔して、脳に“飢餓状態である”と勘違いさせ、余計に果糖を求めるようになる。

 さらに、大気汚染や喫煙、エストロゲンなどの化学物質、そして風邪のような症状をもたらすアデノウイルスなどが“太らせ因子”となり、ホルモン分泌を狂わせている。その結果、食欲を暴走させ、代謝を低下させ、肥満を蔓延(まんえん)させている。肥満は、意志の強弱だけの問題ではなくなっているのだ。

 本書では果糖漬けからの更生プログラムとして、食物繊維の摂取の仕方と1日15分の運動効果を解説。ダイエットに失敗し続けているという人は、太る原因から学び直すべきだ。


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々