古地図や写真からひもとく“かつての買売春地帯新宿”

公開日: 更新日:

 東洋一の歓楽街・新宿の成り立ちを、古地図などさまざまな文献や写真などからひもといていくのが、三橋順子著「新宿『性なる街』の歴史地理」(朝日新聞出版 1700円+税)である。

 新宿の繁栄を知るには「赤線」「青線」から知る必要がある。「赤線」とは戦後の1946年から売春防止法が施行される直前の58年まで栄えた買売春地域。警察の監督の下、「特殊飲食店」に勤務する「女給」が客と「自由恋愛」をするという建前で成り立っていた。

 赤線発足時、都内には戦前の遊郭を起源とする8カ所と、日本占領軍将兵専用に設置された慰安所起源の8カ所を合わせ、計16カ所の赤線が設定されていた。江戸の宿場町として栄えた新宿は前者で、その場所は現在の新宿御苑に近い2丁目一帯だ。

 料金は地域で異なったが、新宿ではショートタイムが600円、泊まりが2000円前後。当時、公務員の初任給は7650円で、赤線遊びはなかなか高級なものだったことが分かる。

 ちなみに赤線とは、警察が営業許可区域を地図上に赤線で囲ったことが語源とされるが、“囲われていない”非合法な売春地域が青線と呼ばれた。新宿では歌舞伎町界隈がかつての青線として知られるが、歌舞伎町より先に青線となったのは、新宿通りの南側の、新宿駅東口から延びる中央通りに挟まれたエリアだったという。

 戦前は性的サービスのないカフェ街で、空襲で丸焼けとなった後、すぐに復興したものの不景気が続き、困ったカフェの女給たちが非合法に客を取っていたという記録もあるそうだ。

 赤線・青線の終焉やゲイタウンへの変遷、女装者とのすみ分けについても詳述する本書。新宿という街のたくましさが伝わってくる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  2. 2

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  5. 5

    ドジャースが村上宗隆獲得へ前のめりか? 大谷翔平が「日本人選手が増えるかも」と意味深発言

  1. 6

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  2. 7

    レーダー照射問題で中国メディアが公開した音声データ「事前に海自に訓練通知」に広がる波紋

  3. 8

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  4. 9

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  5. 10

    巨人が現役ドラフトで獲得「剛腕左腕」松浦慶斗の強みと弱み…他球団編成担当は「魔改造次第」