ネットの転落?

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「ソーシャルメディア 四半世紀」佐々木裕一著

 インターネットはいまや格差社会の源泉とまでいわれる。一体なにがあったのか?



 書名を見ると一瞬「え、そんなに?」と思うが、私的な日記をウェブに公開して多数が閲覧する「ウェブ日記」が日本で誕生したのが24年前。グーグルの創業が20年前。フェイスブックが14年前、ツイッターが12年前。当初はどうやって利益を出したらいいのかわからず、マッキンゼーの一部アナリストらを除くと「ネットは金や権力が渦巻く世界とは別の世界であるという考え方が当時は主流だった」。

 しかし05年ごろまでに広告が収益源になるというビジネスモデルが浮上し、産業化が加速する。そこから一気にネット産業は拡大し、10年を過ぎると「ブランディング」が至上課題になった。そしていまネットはフェイクと監視の巣窟になっているのだ。著者は電通のマーケティング部門やNTT系シンクタンクでのITサービス戦略立案などの経験を持つ情報社会学者。

(日本経済新聞出版社 3200円+税)

「さよなら、インターネット」武邑光裕著

 かつて夢の未来を開くと期待されたインターネット。しかしいまやネット上の個人情報が本人の知らないところで売り買いされ、プライバシーは丸裸。しかしそれを阻めば暮らしは不便になる。ソーシャルメディア・アプリの大半は「無料」でサービスを提供する一方、細かな情報を登録しないと友人との連絡にも事欠くからだ。いったん登録すれば、以後の行動がすべて筒抜けになるのだ。

 こんな状態を前に初期のIT起業家の中からは「ぼくは間違っていた」と告白する例も増えている。著者はベルリン在住のメディア評論家。米国初のネット技術に対してEU(欧州連合)が立法化したGDPR(一般データ保護規則)はこれまで野放しだったIT巨人に強力な規制を加えようとしている。果たしてそのもくろみは吉と出るか。

(ダイヤモンド社 2000円+税)

「IoT クライシス」NHKスペシャル取材班著

 昨年11月に放映されたNHKスペシャル「あなたの家電が狙われている」は衝撃だった。手元のスマホで自宅の炊飯器やクーラーを操作できる「スマート家電」。ところがこの操作が何者かに乗っ取られ、自宅の中が勝手にのぞき見されているとしたら? 

 実はこれが実際に起こっている。子供や年寄りの見守りに設置したはずのカメラが勝手に動き出し、防犯カメラの多くがハッキングされていたのだ。そんな番組の衝撃を書籍化した本書を読むと改めて怖さが身に染みる。通常のネット検索では出てこない「ダークウェブ」の世界。その闇がいつのまにか足元に広がっているのだ。

(NHK出版 1300円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

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