草凪優(作家)

公開日: 更新日:

6月×日 新型コロナの影響で夜の街にも繰り出せず、最近はもっぱらPCの前で宅飲み。酒の肴はYouTube、アイドルグループ・乃木坂46関連のものばかり観ている。これだけ観てたらそのうち夢にまで出てくるんじゃねえのと思っていたら、本当に出てきたので驚いた。毎日寝るのが楽しみでしようがない。

 その乃木坂46の姉妹グループ、欅坂46をモチーフにしている小説ということで、松田青子著「持続可能な魂の利用」(中央公論新社 1500円+税)を読む。カリスマ的センターであった平手友梨奈が脱退する前に書かれたものであるが、終盤に平手と主人公が邂逅するシーンがあってニヤニヤ(固有名詞はいっさい排除されているが、まあ、わかるように書かれている)。

 現代社会における女性の生きづらさがテーマで、日本の「おじさん」に延々と毒づいている。批判の切れ味は鋭いし、女性読者は共感できるんだろうけど、その魂を育んだのもまた日本社会である、という視点が欠けているのが惜しい。

 なにかひとつでも愛着をもって語られていれば、そしてそれに対する葛藤が描かれていれば、読後の印象は一変したはず。全否定なら、登場人物のひとりがそうしているように、さっさと海外移住してしまえばいいだけだからだ。

 また、日本のアイドルグループが「未熟」を売り物にしているという指摘にも首を傾げた。売り物にしているのは「成長」だと思うが……。

 その一方で韓国のアイドルグループは完成されたステージを提供する「強い女」たちの集まりであり、その方向性は西洋社会とシンクロするなどと賞賛しているが、エンターテイメントの歴史の浅い韓国は、西洋のやり方をそっくりそのまま輸入したので方向性は同じに決まっている。だいたい、韓国の芸能界が日本の「おじさん」なんて及びもつかないような深い闇を抱えているのを知らないのか? と思ったり、思わなかったり。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?