「うおづら」森岡篤著

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 世の魚図鑑は、体形や体色、模様がよく分かるように、魚の姿を横向きで伝えている。対する本書は、真正面から魚の顔を写した異色の図鑑。魚の顔、だから魚面=「うおづら」だ。

 ページを開けば、感情表現が豊かとは思えない魚たちが、実に生き生きとした表情を見せてくれることに驚くに違いない。

 おちょぼ口に両頬の丸い紅、オレンジのアイラインを引いたような真ん丸の目がまるで「おかめ」のような「さらさらんちゅう」(表紙)をはじめ、近所のご隠居のようなたたずまいの「デンキナマズ」や、分厚い唇が印象的な「リップステックゴビー」、まるで鉢巻きをした若者のような「ハチノジフグ」、口をへの字に曲げて怒っているかのような「高頭丹頂」など。

 魚なのだが、身近な誰かをついつい連想してしまうような表情の豊かさについ見入ってしまう。

 中には少女マンガのヒロインのように目が潤んで悲しげな表情の「ベタキャンディ」や、逆に異星人にしか見えない縞模様の三角顔「ゴールデンサンダーロイヤルプレコ」など、かわいいものから変顔まで約150種ものうおづらを収録。

 魚の表情をシンプルに撮影するため、背景は白で統一され、透明感のある尾びれや腹びれが表情にアクセントを加える。

 著者は、本書の撮影のため、すべての魚を自宅の水槽で飼ったという。いい顔の魚を探しては家に連れ帰り、元気になるのを待って最高のコンディションで撮影。魚もストレスで次第に不機嫌になり、いい顔をしてくれなくなるそうだ。

 巻末には魚たちの「全身」写真も添えられ、図鑑というよりは、我が家で飼うならこんな顔の魚がいいと、ペット選びのカタログの趣。

 見て楽しく、そしてその表情に心が和む面白ブック。

(大和書房 1600円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

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