「無暁の鈴」西條奈加著

公開日: 更新日:

 久斎が上野国の山間にある西菅寺に預けられてから6年が経った。久斎にとって寺は決して居心地のいい場所ではなかった。生家は、隣国下野国の武家の名家だが、庶子のため継母や兄弟から疎んじられ、7歳で寺に預けられた。しかし、寺でも兄僧らにいじめられ、唯一の楽しみは早朝の水くみで年上の娘・しのと言葉を交わすひとときだった。 

 そんな中、しのの父親が亡くなった。葬式のあった夜、久斎は葬式代としてしのの操を奪った住職の利恵を殴り飛ばす。

 しのは崖から身を投げる。何もかも嫌になり、寺を飛び出した久斎は、世知に通じた同い年の万吉と出会う。久斎は奉公先を逃げ出したという万吉に同行して江戸に向かう。

 信じるものを失い、絶望から無暁と名乗る久斎の人生を描く長編時代。

(光文社 858円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  2. 2

    松坂桃李「御上先生」は連ドラの“勝ちパターン”を外してしまった? 1ケタ陥落で疑われる《失速と中だるみ》

  3. 3

    大阪万博の目玉 344億円の巨大木造リングはほぼフィンランド産…「日本の森林再生のため」の嘘っぱち

  4. 4

    なぜオリ山岡泰輔だけが名前を晒されたのか…SNSでは「不公平」「一律公表すべき」の声

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希 異例の「マイナー相手に実戦登板」で見えた首脳陣の痛恨トラウマ

  1. 6

    大河「べらぼう」で横浜流星を食う小芝風花“瀬川”大好評も 迫る「身請け」危機…視聴率ついに1ケタ台突入

  2. 7

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 8

    大阪万博パビリオン建設は“24時間体制”に…元請けの「3月中には完成させろ!」で危惧される突貫工事の過酷労働

  4. 9

    “選挙のプロ”立花孝志まさかの凡ミス赤っ恥…第一声「神戸→船橋」急きょ変更のお粗末

  5. 10

    岡田将生『御上先生』での悪役ぶりが好評 顔面美を生かした怪演で俳優としての地位確立