「わたしは無敵の女の子」ケイト・T・パーカー著、栗木さつき訳

公開日: 更新日:

 アメリカの「美しい」少女たちのポートレート集である。

 とはいっても、表紙の少女エラ(12歳)の引き締まった表情、そして書名からもお察しの通り、美しいと聞いて鼻の下がちょっと伸びてしまう男性と著者では、美しさの概念がちょっと異なる。

 写真のエラは、初めて出場するトライアスロンの大会を控え、「ものすごくこわかった」のだが、前日に「どんなにこわくても、どうってことないって顔をしなさい」とママから言われ、してみせた表情を撮ったもの。

「これを見ていると、ほんとにこわいものなんかないって思えてくる」とエラは言う。

 両親に「ありのままの自分」でいることを認められて育った著者は、自分も娘たちに「ありのままのあなたがステキ」と伝え続けてきたという。

 もうお分かりだろう。この写真集に登場する写真は少女たちのありのままの姿をとらえたものなのだ。

「カンペキって、そんなにいい? カンペキって、たいくつでしょ」と屈託なく笑う12歳のヌール、「このソバカス、気にいってる。だって、これもあたしの一部だもん」と、見事なソバカス顔でちょっとカメラにおちゃめな変顔をして見せる9歳のエラD.「自分でつくりだすのはいつだって楽しい。それがいちばんだいじ」とギターを抱えた10歳のヨリサなど。

 それぞれのポートレートには、彼女たちが発した言葉が添えられる。

 カメラをにらみつけるようなエラのような少女もいれば、意志の強さが瞳に宿る少女や、遠く未来を見つめるような視線の少女、そしてこれから起こる楽しいことにワクワクと胸を躍らせ目が輝いている少女など。その率直な言葉と少女の純粋な目の輝きについつい引き込まれてしまう。

 中には、数カ月の間に立て続けにがんで両親を失った18歳のフェイスや、車にひかれて骨がつぶれた14歳のシェルシー、がんに片足を奪われた12歳のグレースB.のように、大きな試練に立ち向かっている少女もいる。

 著者は、美しさとは、「髪を整えていることではないし、おしゃれな服を着ていることでもない」。美しいというのは「つよい」ということだという。

 登場する少女たちの美しさは、どんなことにも前向きに取り組む、その強さからにじみ出ているようだ。

「そんなことするほどつよくないって、みんながおもうようなことだって、わたしはたっくさんできる」と腕を組んで堂々とカメラの前でポーズをとるディランなど、たった6歳にして確固たる自分を持っている。「あたし、ちょっと、おこりんぼよ」と言う7歳のアリスには、こちらも子ども扱いをせずにちゃんと向き合わなければと思わせる真剣さがある。

 日本では今さらながらの男女平等論議が盛んだが、ありのままの自分を生きる彼女たちのその姿は、そんな頭でっかちな論争を軽々と超え、女も男も、生きる上で何が大切なことなのかをストレートに教えてくれる。

(海と月社 1760円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  2. 2
    「ダルよりすごい」ムキムキボディーに球団職員が仰天!プロ3、4年目で中田翔より打球を飛ばした

    「ダルよりすごい」ムキムキボディーに球団職員が仰天!プロ3、4年目で中田翔より打球を飛ばした

  3. 3
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  4. 4
    22年は尻回りが推定1.5倍に増大、投げても打ってもMLBトップクラスの数値を量産した

    22年は尻回りが推定1.5倍に増大、投げても打ってもMLBトップクラスの数値を量産した

  5. 5
    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

  1. 6
    橋下徹氏&吉村知事もう破れかぶれ?万博の赤字に初言及「大阪市・府で負担」の言いたい放題

    橋下徹氏&吉村知事もう破れかぶれ?万博の赤字に初言及「大阪市・府で負担」の言いたい放題

  2. 7
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  3. 8
    大谷の2023年は「打って投げて休みなし」…体が悲鳴を上げ、右肘靭帯がパンクした

    大谷の2023年は「打って投げて休みなし」…体が悲鳴を上げ、右肘靭帯がパンクした

  4. 9
    「横浜愛」貫いた筒香嘉智 巨人決定的報道後に「ベイスターズに戻ることに決めました」と報告された

    「横浜愛」貫いた筒香嘉智 巨人決定的報道後に「ベイスターズに戻ることに決めました」と報告された

  5. 10
    河野太郎大臣「私は関わっておりません」 コロナワクチン集団訴訟で責任問う声にXで回答…賛否飛び交う

    河野太郎大臣「私は関わっておりません」 コロナワクチン集団訴訟で責任問う声にXで回答…賛否飛び交う