「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」 カトリーン・マルサル著 高橋璃子訳

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 1776年に経済学の父アダム・スミスが提唱して以来、経済を動かしているのは「利益を追求」する人々の利己心だとされてきた。そこには、生涯独身で彼の身の回りの世話をしてきた母親の「家庭内労働」は考慮されていない。子どもを産み育てることも、家族に食事を作ることも、経済発展には欠かせないが、GDP(国内総生産)にはカウントされてこなかった。一方で前世紀半ばから多くの女性が社会に進出したが、女性の賃金はいまだに男性よりも低く、上級管理職の数も少ない。

 それは私たちの働き方や考え方が、人間は理性に基づいて行動し不必要なことはしない「経済人(ホモ・エコノミクス)」であるという誤った考え方に立っているからではないか。

 この経済人に象徴される経済学の考え方に疑問を呈し、市場経済の外にあるモノを含めて社会全体がどう維持・運営されているのかを考える「フェミニスト経済学」の視点から未来の経済モデルを考察したテキスト。

(河出書房新社 2310円)

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