「女優」大鶴義丹著

公開日: 更新日:

 小劇団を主宰する三岳テツロウは、アングラ俳優だった父と新劇の看板女優だった母の一人息子だ。母が有名女優であることを知ったのは小学校の入学式のとき。他の親たちが母を取り囲んで写真を撮っていたからだ。

 母のことを恥ずかしいと感じていたが、大学の演劇部で舞台に立ったとき、変化が起きる。観客席からの視線を見て、かつて向けられた好奇と悪意の瞳が、観客の瞳と入れ替わったように感じた。70歳を過ぎた母は仕事を絞るようになったが、テツロウの恋人、フキコが書いた台本を見て、「この母親の役を私がやりましょう」と言った。それは2人が頼みたいが言い出せなかった鬼母役だった。

 演劇の世界に生きる母子の葛藤を描く。

(集英社 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「聘珍樓」の3度目の倒産は“氷山の一角”か…格安店の乱立で高級中華が苦境に

  2. 2

    大谷 28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」とは?

  3. 3

    阪神藤川采配の奇々怪々…「佐藤輝明を三塁に固定、ヘルナンデスを外野で使うのが普通やろ」

  4. 4

    さようなら元横綱白鵬…最後の最後まで“問題児”ぶり炸裂、相撲協会は「退職届」受理へ秒読み

  5. 5

    いとうあさこだけでない「育ちの良さ」が隠せない50代女芸人…“実家が太い”“隠れ高学歴”の強者も

  1. 6

    菅野智之めぐり「ドジャースvsヤンキース」争奪戦へ…オリオールズで孤軍奮闘もトレード要員へ待ったなし

  2. 7

    【スクープ!】元横綱白鵬が相撲協会に「退職届」を突きつけていた! あまりの自己チューぶりに「洗脳説」まで浮上

  3. 8

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  4. 9

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  5. 10

    備蓄米で不当に儲けている? ネットにあふれる「コメ高騰は卸売業者が元凶」ウワサの真偽