日本史の学び直しにピッタリな本

公開日: 更新日:

「日本史の新事実70」浮世博史著

 学生時代は日本史がつまらなかった人でも、大人になって時代劇や時代小説を楽しむようになると、もっと勉強しておけばよかったと思うのではないか。今回は、歴史を動かした戦をマンガで再現したものから、日本の長い歴史がぐんぐん頭に入る速読本まで、日本史を学び直したい大人にお薦めの5冊をご紹介。



 参勤交代といえば、江戸幕府が諸藩の経済力を奪うために命じていた、と習った記憶がある。しかし実際は違うようだ。本書では、古い常識が根付いた歴史上の出来事について、新事実を紹介している。

 徳川家光が出した武家諸法度には、参勤交代についてこんな内容が記されている。「従者の員数は近ごろ非常に多く、民の負担となっている。今後は相応に規模を縮小せよ」。大名の経済力をそぐどころか、経費削減せよと命じているわけだ。

 ところが、大名たちは出立時と江戸に入る直前には人を雇って行列を大きくし、立派な衣装を身にまとった。そして道中は人を解雇し衣装も質素なものに着替えていたという。つまり、お家同士の見えの張り合いのため、大名自ら華美な行列をつくって支出を膨らませていたのだ。

「徳川綱吉は犬好きではない」「士農工商の身分序列はなかった」など70の新事実に、目からウロコの連続だ。

(世界文化社 1760円)

「速読日本史」金谷俊一郎著 宇都出雅巳監修

 日本史好きでも、幕末など得意な時代に知識が偏ってはいないだろうか。地続きである歴史は、通して詳しくなった方がより理解が深まるが、それが簡単にいかないのは覚えるべき日本の歴史が長すぎるから。本を読んでも得意な時代以外は忘れてしまうという人も多いだろう。

 これを解決する方法として、本書は速読を提案している。しかも「速く読んで」「たくさん繰り返す」ことにより、読んだ内容を記憶していく「KTK(高速大量回転)法」を採用。膨大な量の日本史も、どんどんインプットされるというわけだ。

 速読が身に付きやすいよう、本文レイアウトには工夫が施されている。人間が文章を読む際の視点移動に着目し、文節ごとに科学的なデザインでレイアウト。訓練をしなくても、通常の1.5~2倍のスピードで読めてしまうという。

 弥生から平成まで約500ページの大容量。日本史を網羅したい人にお薦めだ。

(ワニブックス 2178円)

「再現イラストでよみがえる 日本史の現場」朝日新聞出版編

 縄文時代から現代まで、日本の歴史の転換点とも言える事象を47のイラストで完全再現しながら解説する。

「倭」から「日本」への大きな転機となったのが、天智2(663)年に起きた「白村江の戦い」だ。倭国と良好な関係を築いていた朝鮮半島の百済に対し、唐・新羅連合が攻め込んだ。倭国は軍勢を送り、白村江の河口で唐軍と激突。本書には海戦の詳細なイラストが掲載されている。

 唐の戦船は、船体が鉄板で覆われ、組織だった兵法で敵を迎え撃った。一方、倭国は地方豪族が徴兵した軍隊を中央豪族が引率し、全体を統括する大将軍がおらず、また船は木造船だった。

 結果は明らかで、イラストには木造船が唐による火の攻撃で燃え尽き、海水が倭兵の血で赤く染まった様子が描かれている。壊滅的な敗戦により百済は滅亡。その後、倭国は日本国と名乗るようになった。

 リアルな再現イラストで、歴史の現場が体感できる。

(朝日新聞出版 1760円)

「バトルマンガで歴史が超わかる本」茂木誠著 大久保ヤマト漫画

 歴史上有名な18のバトルを解説。開戦の様子は大迫力のマンガで再現され、バトル後の影響なども解説されている。

 今この時もロシアとウクライナの戦争が続いているが、日本も20世紀初頭、日露戦争でロシア帝国と戦った。ロシア軍は40隻のバルチック艦隊を投入し、数の力で日本艦隊を圧倒しようとする。本書では、正面の敵艦隊の直前で全艦を急旋回させる日本軍の大胆な戦法「東郷ターン」の様子などをマンガで再現している。

 このバトルの勝者は大日本帝国。日本は戦時国際法にのっとり、負傷したロシア兵を救護した。これは、日本が文明国であることを世界に認めさせるために重要だったという。そしてこの結果を受け、アジア・アフリカでは西欧からの独立運動が盛んになった。ヤマトVS隋帝国、イスラム教徒VS十字軍など、日本史だけでなく世界史の中のバトルも紹介している本書。弱肉強食が歴史の法則である事実を突き付けられる。

(飛鳥新社 1500円)

「判定!高校『歴史総合』教科書」伊勢雅臣著

 令和4年度から、高校の必修科目として近現代史に重点を置いた「歴史総合」がスタート。グローバル化の進む国際社会で、正しい歴史教育は非常に重要だ。

 ところが、検定を通過した7社の教科書それぞれで表記が異なり、客観性を欠いたものや説明不足が多々あるという。使った教科書によって、歴史認識が変わってしまうと本書は問題提起している。

 例えば、幕末に叫ばれた、列強勢力を打ち払おうとする「攘夷」である。これは、国の「独立維持」という目的意識が理解できないと、単なる排外主義としか捉えられなくなる。しかし、「無礼な西洋諸国を従わせる」「対外強硬策」などの表記をしている教科書が3社あり、生徒は偏狭なナショナリズムと誤解してしまう恐れが多分にあると本書。

 他にも、台湾統治や大東亜戦争などさまざまな出来事について、各教科書の表記を挙げながら内容を精査。近代史の再認識にも役立ちそうだ。

(グッドブックス 1760円)

【連載】ザッツエンターテインメント

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言