枡野浩一(歌人)

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5月×日 地上5階の庭で12鉢のバラを育てている。木村卓功著「新しいバラ」(NHK出版 1870円)を購入。病気に強く、美しく、香りのよい新品種を世に出してきた「育種家」である著者のバラ。まだ1鉢も持っていないのは、バラのネーミングが素敵すぎる印象があって。「トロイメライ」あたりを、いつか育ててみたい。

5月×日 俳句と短歌の二刀流は難しい。両方を行き来する堀田季何著「俳句ミーツ短歌」(笠間書院 2090円)に感嘆。紹介される個々の作品が楽しく、これ1冊で川柳もわかる。《川柳と俳句と短歌の区別などつかない人がモテる人です》(枡野浩一)と詠んだことがあるが、区別のつく人こそがモテる時代が来てほしい。

5月×日 本日は芸能事務所タイタンが運営する「タイタンの学校(芸人コース)」の初日。歌人だが芸人をめざすことにした。タイタンを率いる爆笑問題・太田光さんの本は出たら買う。「爆笑問題」名義の初エッセー集「天下御免の向こう見ず」(幻冬舎 503円)の冒頭「夏休み」が一番好きだ。

 最新小説「笑って人類!」(幻冬舎 2420円)は分厚さに怯え、電子書籍を購入。読み始めたばかりだし、あまり似ていないけれど松尾スズキさんの大長編「宗教が往く」(文藝春秋 上.681円、下.734円)を連想。両者をつなぐのは「愛は負けるが親切は勝つ」という名言で知られる作家カート・ヴォネガット。

5月×日 小谷野敦さんの最新刊「レビュー大全 2012-2022」(読書人 3960円)は辞書のような大著だが驚くほど読みやすいレイアウト。10年の歴史を感じつつも一気に半分以上つまみ読みした。率直すぎる感想に何度も声を出して笑う。Amazonはなぜ小谷野さんの実名レビューを全削除したのだろう。文化の損失としか思えない。折しも「文學界」発表時に夢中で読んだ小谷野さんの私小説「蛍日和」(幻戯書房 3190円)が本になるというのでAmazon予約。

 傷つくようなことも書いてあるが、語り手のあたたかい諦観のようなものが手渡され、読み終えたあともずっと主人公夫婦の今について考えをめぐらせてしまう。

【連載】週間読書日記

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