著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「西洋古典 名言名句集」西洋古典叢書編集部編

公開日: 更新日:

「西洋古典 名言名句集」西洋古典叢書編集部編

 わたしは仕事にとりかかるのが遅い。今だってこの原稿を書き始めようとして、その前にお茶を入れようとキッチンに行き、なぜか鍋を磨いて戻ってきたところだ。何事も始めるまでがたいへん。ギリシャのことわざが言う通り「始めは全体の半分」である。アリストテレスはこれを踏まえて言ったらしい──「思うに、『始めは全体の半分』以上である」。偉大な哲学者も仕事を始める前にモタモタしたのだろうか。

 さて今回ご紹介するのは、京都大学学術出版会が誇る膨大な「西洋古典叢書」シリーズからすくい上げられた名言集。寝転がってパラパラとページをめくっているだけでも、脳みその上を知的な風が吹き抜けていくありがたーい一冊だ。「愛」「悪」「怒り」などと50音順の項目別に名言が並び、出典も原文も完璧に網羅されている。いろんな楽しみ方ができる本だが、わたしは「推し」を見つけてしまった。

「恋する人の財布は、その口を葱の葉で締められている」は、恋をすると財布の紐がゆるくなるってこと。「牛につくハエは耳のところにたかる」は、追従者はまず相手の耳にたかるという意味。この2つともプルタルコスの著書から引いたものらしい。ほかにも、プルタルコスの名言はどれもおもしろい。帝政ローマの著述家プルタルコス、いいね、気に入った!

 コラムも興味深い。たとえばプラトンらの著作に登場する謎めいた鳥カラドリオス。中世の物語では、病人が持ち直すか寿命が尽きるかを判断する鳥として描かれ、これが三遊亭円朝の落語「死神」のルーツらしい。プラトンと円朝にそんなつながりがあったとは。

(京都大学学術出版会 2640円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    石破自民は反省ゼロ!「非公認」逃れた“裏金議員”34選挙区はココだ【一覧付き】

  2. 2

    【長野】裏金とカルト支援という「お守りを失った」世襲議員の焦燥会員限定記事

  3. 3

    岡田阪神“強制終了”は「事実上の解任」…体調不良で異例の退任会見ナシなど誰も信じない

  4. 4

    渡部建はキスなし即ベッド“超自己中SEX” 元カノ女優が激白

  5. 5

    阪神藤川監督の就任会見「言語明瞭、意味不明瞭」だった“特殊事情”…虎ファンが感じた心の揺れ

  1. 6

    ついに推薦入試ネット出願登録スタート…悠仁さま“東大進学論争”の根本原因は政治家の怠慢

  2. 7

    山本舞香結婚でXにあふれた「舞香ん家」って何だ? 伝説の「お前が挨拶しろ」エピソードを思い出すファン続出

  3. 8

    NBAを目指す河村勇輝と富永啓生を待ち受ける…開幕後のエコノミー&モーテル地獄

  4. 9

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  5. 10

    ジャンポケ斉藤慎二 ロケ車内での性的行為には“常習説”…吉本契約解除は「トカゲの尻尾切り」