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「非暴力主義の誕生」踊共二著

「非暴力主義の誕生」踊共二著

 本書は非暴力思想を西洋の宗教思想の歴史に求める。カトリックが支配した中世のヨーロッパでは「正当な理由のある戦争」は正しいとする「正戦論」を掲げ、異教徒との戦いや異端の処刑も宗教的に意義あるものとする「聖戦論」があった。キリスト教の聖職者は「神の平和」という非戦運動を起こしたりもしたが、宗教は戦争を排するものではなかった。

 しかし、宗教改革を経た後の北ドイツとオランダに起こった洗礼重視派のメノナイトは平和的な信仰を掲げ、ここからアーミッシュが生まれる。この宗派は今ではアメリカで特異な生活を送る少数派として知られるが、儀式には方言化したドイツ語を使い、剣をとることをかたくなに拒む一方、厳しい信仰を貫くために体罰を辞さないという矛盾もかかえている。本書はこうした歴史をくわしく紹介すると同時に、戦後の日本にメノナイト派が定着したいきさつにもていねいに触れている。原爆投下を経験した広島の牧師がアメリカを訪問したのを機に日本での宣教が始まったという。

 著者は最後にウクライナ戦争の今日、どこまで非暴力を貫くことが可能かとも問いかける。教育と文明化が暴力をふるうことを避ける「心と体」を持つ人々を増やしてきたのではないかと未来に希望を託している。 (岩波書店 1034円)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

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