著者のコラム一覧
クロキタダユキ

パトリオット・デイ(2016年・米国)

公開日: 更新日:

 2013年、ボストンマラソンのゴール地点を警備していた市警の刑事トミーを軸にドラマが展開。爆弾テロの再現で、何が起こるか分かりつつも見入ってしまう。登場人物はトミー役のマーク・ウォールバーグら芸達者ばかりで、監視カメラ映像から犯人を割り出す緊迫した臨場感やテロリストに射殺された警官のドラマもしっかり描かれているからだろう。

 テロと断定されたことで捜査権を握ったFBIは、犯人の妻を勾留。狂信的な夫に隷従する相手に爆弾のありかを迫るが、口を割らない。殉教者の夫に従えば自分も天国に行けると強気だ。

 狂った夫婦にも一人娘が。そこで、ヒジャブをまとった女性捜査官が放った言葉だ。

 当時のオバマ大統領の演説を挟むことで、映画はリアル感が増す。住宅街での爆破シーンはヘタなアクション映画よりドキドキの連続。犯人の兄弟は、兄が死亡、弟は潜伏先で確保される。

 確保のシーンが爽快だが、そこに至るまでには路上に転がった足や現場分析のため放置された少年の遺体がそのまま描かれている。残酷なシーンの一つ一つにテロに屈してはいけない思いがこみ上げる。

 映画のラスト、悲劇が起きたことで、希望が芽生えたと流れ、トミーをはじめ実際の当事者たちのインタビューが映し出される。テロは起きないに越したことはないが、東京五輪を目前に控えた日本にとっても、決して他人事ではないだろう。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  2. 2

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  3. 3

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  4. 4

    広陵辞退騒動だけじゃない!「監督が子供を血だらけに」…熱戦の裏で飛び交った“怪文書”

  5. 5

    ドジャース大谷が佐々木朗希への「痛烈な皮肉」を体現…耳の痛い“フォア・ザ・チーム”の発言も

  1. 6

    今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに

  2. 7

    高市早苗氏は大焦り? コバホークこと小林鷹之氏が総裁選出馬に出馬意向で自民保守陣営は“分裂”不可避

  3. 8

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった

  4. 9

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い

  5. 10

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督